CROSS研究生滞在報告 東海大学 能登氏、加茂氏

2022.11.16

CROSS研究生滞在報告 東海大学 能登氏、加茂氏
中性子・X線反射率法によるアモルファスGeS2への銀のフォトドーピングの研究

研究開発部 坂口 佳史

東海大学大学院工学研究科電気電子工学専攻の能登勇真さん(修士課程2年生)と加茂直記さん(修士課程1年生)は、中性子・X線反射率解析の研修活動を行うため、2022年7月25日から29日の5日間、CROSS研究生としてCROSSに滞在されました。2人の所属する渋谷猛久教授の研究室では、光ホログラフィーの感光材料や光加工による回折格子に応用できる銀/アモルファスGeS2二層薄膜の銀の光ドーピングの研究が行われています。大学では、大学にあるX線反射率装置を用いて銀の光ドーピングの効果を調べておられましたが、その装置には使い勝手の良い解析ソフトがなく、データ解析を進めるのが困難な状態にありました。一方で、共同研究者である筑波技術大学の村上佳久博士と共にMLFへ課題申請を行い、中性子反射率実験を行う計画も立てられていました。そこで、今回、中性子・X線反射率の基礎を学び、世界的によく用いられている中性子反射率、X線反射率どちらにも使える解析ソフトMotofitを用いて大学で得られたX線反射率データの解析を行い、これらを通じて、今後の中性子反射率測定の準備を行うことを目的として研修会が行われました。

1日目午前は坂口が中性子・X線反射率の基礎の講義を行いました。午後はJ-PARC MLFの全体を見学し、さらに偏極中性子反射率計BL17(写楽)の見学を行いました。その後、坂口が行ったBL17(写楽)を使った中性子反射率測定結果の例の紹介を行いました。

BL17(写楽)にて(左より、坂口、村上博士、能登さん、加茂さん、渋谷教授)

解析演習の様子


2〜4日目の3日間は、大学で測定されたX線反射率測定結果の解析を行いました。大学では、二層の薄膜試料を作製するにあたり、GeS2蒸着後にアニールした場合としていない場合の2種類の試料について、光照射時間を変えながらX線反射率測定が行われました。これら2種類の試料を能登さんと加茂さんが手分けして解析を行いました。まず、大学で取得されたデータをMotofitで解析できるデータ形式に変換するところから始め、膜構造の想定、フィッテイングプログラムの使い方、フィッテイング精度を上げるための方法等を、実際の解析作業を通じて学ばれました。大学で行われた解析では見当がつかなかった膜構造も、一眼で、誰が見ても納得がいくレベルにまで、フィッティングの精度を高めて決定できるまでになりました。3日間という短い期間のうちにそこまでレベルを上げることができたのは、ひとえに2人の頑張りにあったと言えます。

最終日の5日目は、午後の報告会のための資料の作成を行いました。解析結果は非常に精度良く得られたものの、この結果の意味を第三者によくわかるように伝えるのはとても難しい作業です。こちらも、能登さんと加茂さんが手分けをして、それぞれの担当分を決めて準備を進めました。発表本番では、2人とも、解析結果とその物理的意味について適切に説明することができました。聴講者からも多くの質問を受け、それらに対しても相手に納得のいく回答がなされました。これも研修で中性子・X線反射率法とその解析手法を十分に習得したことの証であったと言えます。

研修を終え、大学に戻られてからは、今回の解析で得られた結果を受けて新たな実験を展開される予定と聞きました。今回の研修で培った解析技術をベースに、大学での研究が更なる進展を見せることを期待いたしております。

報告会の様子(左より加茂さん、能登さん)

修了証授与の様子(左より、坂口、加茂さん、能登さん、柴山センター長)


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