CROSS

中性子実験装置の装置提案募集について

HOME»実験がしたい»中性子実験装置の装置提案募集について

J-PARC MLFの専用ビームラインは、日本原子力研究機構(JAEA)、高エネルギー加速器研究機構(KEK)以外の設置者が、その利用目的に添った計画を立案し、登録施設利用促進機関であるCROSSに設置した専用施設審査委員会および選定委員会において「中性子線専用施設の設置計画の選定に関する基本的考え方」に基づき検討評価され、選定されます。

設置が認められた専用ビームラインは、専用施設審査委員会が、その使用状況および研究成果等を定期的に評価し、選定委員会の審議を経て必要に応じて登録機関が専用ビームラインの改善、更新、撤去等を勧告します。

募集要項はMLFのサイトをご覧ください。

中間評価

「専用ビームライン 中間評価」について (2014年3月20日付)
J-PARC/MLFの専用ビームラインは、(独)日本原子力研究機構、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構以外の設置者が、その利用目的に添った計画を立案し、登録施設利用促進機関であるCROSSに設置した専用施設審査委員会および選定委員会において「中性子線専用施設の設置計画の選定に関する基本的考え方」に基づき検討評価され、選定されます。 現在、J-PARC/MLFには茨城県による2本の専用ビームラインが稼働中です。設置が認められた専用ビームラインは、専用施設審査委員会が、その使用状況および研究成果等を定期的に評価し、選定委員会の審議を経て必要に応じて登録機関が専用ビームラインの改善、更新、撤去等を勧告します。 専用施設審査委員会の諮問を受けた中性子実験装置中間評価分科会により2013年12月に下記2本の専用ビームラインの評価が実施されました。その答申を基に2014年1月に専用施設審査委員会および2014年2月に開催しました選定委員会において審議され、引き続きビームラインの運用を「継続」する旨の結果を得ました。財団より、設置者である茨城県へこの結果を通知いたしました。 中間評価の審査結果は下記の通りです。

中間評価実施専用ビームライン
  1. 茨城県生命物質構造解析装置(BL03) : (設置者:茨城県)
  2. 茨城県材料構造解析装置(BL20) : (設置者:茨城県)

装置名:BL03(茨城県生命物質構造解析装置)

本装置は、概ね計画通りに装置の建設・維持・技術開発が進んでおり、特に高感度な新規検出器開発により、最高レベルの感度と安定性を達成し世界トップレベルの装置であり、SNS(米国オークリッジ国立研究所)に先行して開発されている。ただし、当初計画で見込んだタンパクの構造解析は期待とは異なり成果は少ない。対策として学・産共同研究となるようなテーマを選び運営することが望まれる。このことにより、産業界へ本装置本来の特徴と有効性を明確に示すことができると判断する。 他方、有機・高分子材料を対象とした周辺機器と解析ソフトの開発が計画されており、この計画に沿った運営により利用者の拡大を期待する。 以上、本装置は中間評価に記述された今後5年間の計画に基づき継続することが妥当と判断する。

装置名:BL20(茨城県材料構造解析装置)

分解能、測定可能なd領域、測定時間についてユーザーのニーズに即した装置性能が概ね達成されており、SNS(米国オークリッジ国立研究所)のPowgen等海外の装置と比較しても遜色ない世界トップレベルの産業利用に特化した装置であり、ユーザーの支援体制も十分整備されている。 特に近年整備された試料交換装置では、装置担当者の創意工夫により優れた技術開発が実施され、その成果は2012年度の日本中性子科学会 技術賞、並びに2010年 6th International Workshop on Sample Environment at Neutron Scattering Facilities においてThe 1st Michael Meissner Prize を受賞するなど、その技術力の高さと創意工夫はユーザーおよび国内外で高く評価されている。 今後ともメールインサービスなど産業界利用をさらに加速する運営体制・制度構築を目指すことを望む。 また、優れた論文発表、あるいは波及効果の大きい成果の公表など、中性子線利用技術の有効性をより広く社会に発信するために、利用企業への働きかけばかりではなく、県プロジェクトにおけるインパクトの大きい研究の重点実施等に期待する。 以上、本装置計画は継続すべき優れたものと判定する。

総評

概ね中間評価調書に記述された今後5年間の計画に基づき、装置管理・運営を継続することが望ましいとの評価を得た。 なお、BL03(iBIX)はハードの整備がほぼ終了し、世界トップレベルの装置が開発されたが、このBLの有効性をアピールすべく、産業利用にこだわらず本装置の特徴であるタンパクの構造解析でインパクトの大きいテーマを企画・提案・実施すべきである。 また、BL20(iMATERIA)は産業利用に特化し、必要な試料環境制御や試料交換装置など整備され、世界に例のない特徴ある装置となっており、国内外で高く評価されている。今後は、更なる利用者支援のために環境整備、人材確保および解析ソフトの充実に期待する。
J-PARC/MLFの専用ビームラインは、(独)日本原子力研究機構、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構以外の設置者が、その利用目的に添った計画を立案し、登録施設利用促進機関であるCROSSに設置した専用施設審査委員会および選定委員会において「中性子線専用施設の設置計画の選定に関する基本的考え方」に基づき検討評価され、選定されます。 現在、J-PARC/MLFには茨城県による2本の専用ビームラインが稼働中です。設置が認められた専用ビームラインは、専用施設審査委員会が、その使用状況および研究成果等を定期的に評価し、選定委員会の審議を経て必要に応じて登録機関が専用ビームラインの改善、更新、撤去等を勧告します。 専用施設審査委員会の諮問を受けた中性子実験装置中間評価分科会により2023年10月から11月にかけて、下記2本の専用ビームラインの評価が実施されました。その答申を基に2024年1月に専用施設審査委員会および2024年2月に開催された選定委員会において審議され、引き続きビームラインの運用を「継続」する旨の結果を得ました。審査結果はCROSSから、設置者である茨城県へ通知いたしました。 中間評価の審査結果は下記の通りです。

2023年度 中間評価実施専用ビームライン
  1. 茨城県生命物質構造解析装置(BL03) : (設置者:茨城県)
  2. 茨城県材料構造解析装置(BL20) : (設置者:茨城県)

装置名:BL03(茨城県生命物質構造解析装置)

当初計画の視点では、すでに装置自身は完成形となっている。実際、3軸133 Åを持つタンパク質での結晶構造解析に成功しており、これは当初目標である3軸135 Åを達成したと評価できる。ユニットセル体積としては世界記録であり、かつ分解能においても世界2位である。これは、総合力としてiBIXは世界最高の生体高分子用単結晶中性子回折装置に到達したと評価できる。装置グループはより巨大なユニットセルを持つタンパク質への挑戦を着実に進めており、いずれ当初計画目標を超える装置になると予想できる。 コーディネータによる支援、エキスパートによる解析の支援、ユーザーフレンドリーなソフトウェア整備など、充実した支援体制が構築、運営されている。この優れた支援体制が、新規ユーザー獲得とユーザーによる世界に冠たる成果を生み出していると高く評価する。 装置の将来像についても、装置の高度化、運営、維持管理、新技術開発などの各項目において明確な計画が立てられており、将来の発展に多いに期待できる。 以上の審査の結果、BL03は当初計画の目標を達成し、性能・成果ともに世界トップクラスの装置に到達していると同時に、充実した支援体制の構築に成功し多くの成果を創出していると評価する。

装置名:BL20(茨城県材料構造解析装置)

設置時の粉末回折装置としてだけではなく、小角散乱での高分子研究、集合組織観測での鉄鋼材料研究を加えた3本柱を一台で確立している。またオペランド測定や動的スピン偏極法の導入など個性ある周辺環境整備も進めており、さらに多眼的な装置への進化しようとしている。このような野心的な方向性の一方で、企業研究者にも使いやすい装置、というコンセプトを堅持している。この結果、BL20は産業利用としては世界で最も優れたハイスループット回折装置といえる。その結果、「エネルギー分野」、「社会インフラ分野」、「生活分野」の3分野で社会に貢献しているユニークな存在となっていることは高く評価できる。成果占有課題も多く、産業界から有用性を評価されている証左と考えられる。このような装置の存在はJ-PARCの世界的な競争力を高める上でも重要な意味を持つ。 さらに、現在実空間測定、ラジオグラフィー実験、即発ガンマ線分析など、産業界からのニーズが大きい分野にも挑戦していく計画に着手している。これはBL20にしかできない多角的な産業利用の展開が多いに期待できる。 BL20グループはZ-codeやMAUDなどの重要な解析ソフトを開発・整備しているだけでなく、その利用法の講習会を定期的に開催している。情報発信を目的とする研究会も活発に行い、新規企業ユーザーの獲得に成功していることも高く評価する。 以上の審査の結果、BL20は当初計画の目標を達成しただけでなく世界的にもユニークな産業利用装置として産業界に大きな貢献をしていると同時に、活発な広報活動、支援活動により中性子散乱のメリットのアピールに大きな貢献をしていると評価する。

総評

茨城県専用施設のBL03とBL20について過去5年間の実績を分科会での審議結果をもとに評価を行なった。BL03分科会からは「iBIXは成果を出しており、継続して運用することを提言する」、BL20分科会からは「今後もBL20が専用装置として継続して運用されることが必要である。」との答申があり、専用施設審査委員会で様々な視点から慎重に議論した結果、両分科会の結論は適切であると判断した。したがって「BL03、BL20とも専用施設として継続して運用すべき」と結論した。

実績評価と次期計画評価

「専用ビームラインの実績評価と次期計画の評価」について(2017年12月28日付)

J-PARC MLFの専用ビームラインは、(国研) 日本原子力研究開発機構、(共) 高エネルギー加速器研究機構以外の設置者が、その利用目的に添った計画を立案し、登録施設利用促進機関であるCROSSに設置した専用施設審査委員会および選定委員会において「中性子線専用施設の設置計画の選定に関する基本的考え方」に基づき検討評価され、選定されます。

現在、J-PARC MLFには茨城県による2本の専用ビームラインが稼働中です。設置が認められた専用ビームラインは、専用施設審査委員会が、その使用状況および研究成果等を定期的に評価し、選定委員会の審議を経て必要に応じて登録機関が専用ビームラインの改善、更新、撤去等を勧告します。2014年には、専用ビームラインの中間評価が行われ、引き続きビームラインの運用を「継続」する旨の結果を得ました。

2016年12月、茨城県からJ-PARCセンターへ茨城県専用施設(BL03、BL20)の10年間の設置期間満了に伴う再契約の申し出がなされました。それを受けて、J-PARCセンターからCROSSに対して、共用法に基づく「実績評価と次期計画の評価」の審議依頼の通知がありました。

CROSSは2017年2月の選定委員会において、「中性子線専用施設の設置計画の選定に関する基本的考え方」に従い「専用施設の実績評価と次期計画の評価」を実施するように専用施設審査委員会に諮問しました。
「専用施設審査委員会分科会」により2017年7月に2本の専用ビームラインの設置後10年間の実績評価と今後の10年間の次期計画の評価が実施されました。その答申を基に2017年8月に「専用施設審査委員会」及び2017年9月に開催しました選定委員会において審議され、『設置後10年の実績は十分役割を果たし、さらに今後10年間の装置管理・運営を継続することが望ましい』との結論を得ました。2017年10月、CROSSより審議依頼者であるJ-PARCセンターへこの結果を通知いたしました。

評価の審査結果は下記の通りです。

実績評価と次期計画の評価を実施した専用ビームライン

  1. BL03(茨城県生命物質構造解析装置;iBIX)
  2. BL20(茨城県材料構造解析装置;iMATERIA)

装置名:BL03(茨城県生命物質構造解析装置;iBIX)

① 実績評価

新型エンコーダモジュールを搭載した改良型検出器の開発など、装置の建設・開発は計画通り進められた。その結果、測定効率、測定可能格子長、分解能などの主装置性能も当初目標をほぼ100%達成し、世界に誇る研究装置となっている。一方、装置建設開始以降、J-PARCでは度重なる事故や震災があり、現在も加速器出力150kW(目標出力1MW)で運転されており、タンパク質の中性子結晶構造解析にとって致命的なトラブルに見舞われてきた。そのような状況において、生体高分子であるセルラーゼやピリン還元酵素などの中性子の特長を生かしたインパクトがある構造解析の研究成果が得られている点、ソフトウエアの充実、パワーユーザーの獲得・育成など、中間評価時の指摘事項はいずれも適切に対応され、開発グループの多大な努力を評価する。設置後10年の実績として世界の生命物質構造解析装置として十分な役割を果たしたと評価する。

② 次期計画評価

タンパク質などの生体高分子の中性子構造解析はX線回折法を補完する手法として、科学的及び社会的意義は大きい。また、産業利用に向けた装置高度化計画や、「1 MW運転時に1 mm立方以下の単結晶で測定可能」という目標設定は適切である。装置グループの先見性は高く、質的に充実した研究及び利用者支援体制が構築される能力は十分保持していると判断される。しかしながら、今後のユーザー数の増加や測定サンプル数の増加を考えると、提案グループの規模は若干脆弱に感じられる。安定的な支援をするためには、グループの増員と支援体制の見直しが必要である。今後10年は加速器が1MWで安定的に運転されることを確信し、次期計画書に記載されているような重水素化計画などタンパク質の構造解析を着実に実行し、中性子構造解析がX線構造解析とともに医薬品のデザインや持続可能社会の構築に大きく貢献できる手法であることを証明されたい。

本装置は、J-PARCの中でも貴重な生命物質研究用の装置であることから、多くの利用者が活用できるよう運営面での工夫を期待する。

装置名:BL20(茨城県材料構造解析装置;iMATERIA)

① 実績評価

分解能、測定可能なd領域、測定時間などの主装置性能のほか、必要な試料環境制御や試料交換装置などが整備された産業利用に特化した世界トップレベル性能を有する特徴ある装置が整備され、また産業界のニーズに即した充実した利用支援体制も整備、運用されている。研究成果の面では、広い分野で論文投稿が増加しており、プレスリリースも行われた。産業利用の面では、着実な成果非公開利用数の増加を示しており、設置後10年の実績として産業利用に特化した世界の構造解析装置として十分な役割を果たしたと評価する。

② 次期計画評価

茨城県のイニシアティブのもと、産業利用を重点的に推進する運営方針は、中性子利用の社会への普及に貢献するものであり、社会的意義は高い。次期研究計画として、重点三分野(エネルギー、社会インフラ、生活)を設定して具体的な研究計画を提案し、それに整合する合理的な高度化計画が示されている。茨城大学の研究者の専門性を生かす有機的な連携が提示されており、研究能力並びに利用者支援能力ともに高く評価する。第1期よりも装置グループメンバーが拡充されており、研究分野の拡大やさらなる発展が期待でき、人材育成という部分も大いに期待したい。J-PARCを代表する産業利用BLであり、今後もその位置づけは変わらないと判断する。

総評

茨城県専用装置のBL03とBL20の設置後10年間の実績と今後の10年間の計画を評価し、「設置後10年の実績は十分役割を果たし、さらに今後10年間装置管理・運営を継続することが望ましい」との結論を得た。