CROSS研究生体験記 東海大学 能登氏
東海大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻
修士課程2年 能登 勇真
私は2022年7月25日から7月29日までの5日間、一般財団法人総合科学研究機構(CROSS)中性子科学センターの研究生として、坂口 佳史主任研究員ご指導の下、X線反射率の測定データにおけるフィッティング解析の手法をご教授頂きました。ここに体験記として活動内容を報告します。
私はX線反射率法によるアモルファス二硫化ゲルマニウムへの銀のフォトドーピングの解明に取り組んでいます。フォトドーピングとは非晶質カルコゲナイドとある種の金属の2層膜に光を照射するとカルコゲナイド中へ金属が異常拡散される現象です。銀のフォトドーピングの過程をX線反射率スペクトルにより計測してきました。しかしながらX線回折装置に付いてきた解析ソフトでは、満足いくフィッティングが出来ずに苦労していました。今回、X線反射率、中性子反射率どちらも解析を行うことができ、世界の諸施設でもよく用いられている解析ソフトMotofitを用いた中性子・X線反射率解析法を習得するためCROSS研究生制度に応募させて頂きました。
初日はX線・中性子の反射率に関する講義と銀の光ドープの測定事例の紹介、そしてJ-PARCを見学させて頂きました。講義では中性子・X線反射率測定の基礎の部分から測定原理まで幅広くご教授頂きました。元々X線反射率測定の原理について理解が曖昧な箇所がありましたが、講義内容がとても分かり易く、どんな事も気軽に質問する事ができたので理解がとても深まりました。私が疑問点を尋ねると、私が理解出来るまで丁寧に説明して下さいました。また、中性子反射率測定を用いた銀の光ドープの研究成果も紹介していただきました。そして、J-PARCではそれぞれのビームラインの紹介をしていただき、試料垂直型偏極中性子反射率計(SHARAKU)については、実験室内に実際に入り間近で見学させて頂きました。貴重な経験ができ中性子を用いた実験への興味が深まりました。
二日目以降は、東海大学で行ったフォトドーピングの実験データについてMotofitを用いて膜構造の解析を行いました。当初は満足いくフィッティングが出来ずに苦労しましたが、膜構造に関するアドバイスを受け、カーブフィッティングはある程度自分で出来るようになりました。ドーピングの進行に伴う膜構造の変化に関しては坂口氏からの助言を頂き、フィッティングを繰り返すことで合理性のある結論を導く事が出来ました。この結論から、実験時に気を付けるべき事や加えるべき条件なども見つかり、今後の研究に生かしたいと思います。
最終日には、今回の解析から得られたデータをまとめ成果報告会を行いました。報告会にご参加頂いた皆様から、沢山のご質問やご助言を頂き非常に有益な時間となりました。今回の実習を経て専門性のあるご質問にも回答できたので、私自身の成長を実感致しました。今回学んだ解析手法を基により詳細な銀のフォトドーピィングの解明に向けて精進して参ります。
最後になりましたが、今回の実習を受け入れてくださいました柴山充弘中性子科学センター長、指導していただいた坂口 佳史氏、お忙しい中成果発表会に参加され、貴重な質問ご意見を頂きましたCROSSの皆様に深く感謝いたします。また筑波技術大学 村上 佳久先生、指導教員の渋谷 猛久先生には、CROSSでの貴重な経験の機会を与えていただきまして深く感謝申し上げます。