CROSS研究生体験記 東京大学 横山氏
東京大学 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻
修士課程1年 横山 裕大
私は2022年6月28日から30日までの3日間、一般財団法人総合科学研究機構(CROSS)中性子科学センターに研究生として滞在し、中性子反射率データの処理と解析手法について実習させていただきました。ここに、滞在記として活動内容を報告します。
私は電気的に合成されるポリマーナノ薄膜について研究しています。普段はナノ薄膜の合成や構造・機能分析を行なっていますが、これらの分析は全て重合後の膜に限られていました。しかし、薄膜重合のメカニズムを解明するには、重合中の膜構造を明らかにすることが不可欠です。そこで私は、BL17写楽にて中性子反射率法を用いた重合過程のオペランド測定を試みました。今回の実習では、測定によって得られた反射率データの処理とフィッティング解析の手法を習得し、重合中の膜に関する構造解析に挑戦しました。
フィッティング解析では、当初想定していなかった構造を示唆するデータが観測されたこともあり、その解釈に苦戦しました。しかし、中性子反射率に関する基礎的な講義、また、フィッティングしたデータに関する綿密なディスカッションを重ねることで、最終的には合理的な結論を導くことができました。また、CROSSの研究者の方々と中性子を用いた更なる分析手法についての議論ができたことも刺激的でした。
今回の実習の経験をもとに、中性子を適切に活用した膜の構造解析をより強力に推進していきたいと感じました。最後になりましたが、指導して頂いた阿久津氏、また実習を受け入れて頂いた柴山センター長をはじめとするCROSSの皆様に深く感謝申し上げます。