京都大学の北川進特別教授が2025年ノーベル化学賞を受賞された「金属有機構造体」(Metal-Organic-Framework、MOF)に関する研究には、当センターが利用支援を行うJ-PARC MLFの7つの中性子共用ビームライン(BL)のうちの1つであるBL18 千手も活用されました。千手での実験結果を含んだ北川進特別教授らの論文は、アメリカ化学会が発行する学術誌「Journal of the American Chemical Society」に2016年に掲載されました。(DOI:https://doi.org/10.1021/jacs.6b03625)
実験当時に当センターに所属され、上記の論文の共著者であり千手の装置責任者を務める日本原子力研究開発機構の大原研究主幹は、この論文における千手を利用した意義について次のように述べています。
「この研究では、プロトン伝導性のカギとなるプロトンの位置を、千手を用いて高精度で決定することができました。MOFのような金属原子を含む物質中に存在する水素原子の観察は思いのほか難しく、水素原子のような軽原子の観察を得意とする中性子の強みを発揮できたと思います。」
千手では有機物、無機物を問わず極低温や磁場などの複合特殊環境下での中性子回折実験*を行うことができ、多くの研究者に利用されています。他の研究成果も多数ありますので、ぜひこちらの一覧をご覧ください。BL18 千手の成果一覧
* 中性子回折実験: 中性子を物質に照射し、回折した中性子の強度分布から物質の構造、性質を調べる実験。