2024.07.03
CROSS研究生体験記 京都大学 田端氏
京都大学 工学研究科 物質エネルギー化学専攻
修士課程1年 田端 伊織
私は2024年6月3日から6月7日までの5日間、一般財団法人総合科学研究機構 (CROSS) 中性子科学センターに研究生として滞在し、実習をさせていただきました。
私は、柔粘性イオン結晶 (IPC) の界面構造について研究しています。IPCは、カチオンとアニオンのみで構成され、液体と結晶の間の温度領域に中間相(IPC相)を示す物質です。IPCは固体でありながらも柔らかく可塑性があることから、固体電解質でしばしば問題になる電極との界面接合性の問題を改善できる物質として期待されています。一方で、IPCを電気化学的に応用する上では、電極界面に形成されるIPC構造の理解が重要です。実習では、IPCの界面構造を調べるために中性子反射率(NR)測定を行いました。まずは、NRのために基板上へのIPC薄膜形成を行いました。また、重水素化は、NRにより得られた界面構造の由来の明確化に欠かせないため、IPCの重水素化も試みました。
実習では、CROSS 阿久津和宏氏の指導のもとIPCの重水素化、薄膜作成、NR測定を行いました。重水素化では、反応条件でIPCの構成アニオンが分解してしまうことがわかりました。今後は、より安定なアニオンに変更して再度重水素化を試みます。薄膜作成では、スピンコーターを用いてシリコン基板上にIPCを成膜しました。IPCの種類によっては薄膜表面に凹凸が目視で観察され、さらなる成膜条件の検討が必要なことがわかりました。
実習の後半では、作成したIPC薄膜のNR測定を行いました。IPCの種類によって、層構造が全く見られないものや明確な層構造が見られるものがありました。IPCの構成イオン種による界面構造の違いを今後さらに検討していきます。
実習の成果発表会では、本実習の成果だけでなく、京都大学で僕が進めているIPC|電極界面のMD研究の結果についても、CROSSの方々と議論させていただきました。今後の研究の展開に活かせるアドバイスを多くいただきました。
実習中は、重水素化実験・薄膜作成・NR測定に関する実験手順や仕組みについて丁寧に指導していただきました。また、質問にも丁寧に回答していただいたため、重水素化や中性子に関する知識を多く取り入れることができました。本実習で学んだ重水素化や中性子に関する知識を今後の測定や構造解析に活かしていこうと思います。
最後になりましたが、実習を指導していただいた阿久津氏や、実習を受け入れて下さった柴山センター長はじめCROSSの方々に深く感謝申し上げます。