【開催報告】第11回大型実験施設とスーパーコンピュータとの連携利用シンポジウム
サイエンスコーディネータ 瀬戸秀紀
本シンポジウムは、大型実験施設とスーパーコンピュータとの連携利用によって新たな研究成果を生み出すことを目指し、総合科学研究機構(CROSS)が高輝度光科学研究センター(JASRI)、高度情報科学技術研究機構(RIST)と共同で、2014年より開催してきました。
第11回を迎えた本シンポジウムは、持続可能な社会の実現と安全・安心なインフラ構築に不可欠な構造材料をテーマとして、10月17日に秋葉原UDXで開催しました。主催者による開会の挨拶と、文部科学省からの挨拶、各施設、機関の紹介に続いて、最初に「構造科学研究における量子ビームと計算機の利活用」をテーマとしたセッションを行いました。ここではまず茨城大学の友田陽名誉教授から「構造材料の研究における実験とコンピュータの利用」と題する基調講演があり、構造材料研究の近年の動向、コンピュータ利用研究、多結晶金属における弾塑性変形の定量的理解の現状と課題について説明されました。次に日本原子力研究開発機構の菖蒲敬久博士が、「放射光と中性子の独立・相補利用による材料強度・変形評価」と題して、SPring-8とJRR-3を用いた材料強度評価に関する研究を紹介しました。
「マルチスケールシミュレーションを用いた材料設計」をテーマとしたセッションでは、慶應義塾大学の村松眞由准教授が「ナノ金属多結晶に関するFEM-MDマルチスケールシミュレーション」と言うタイトルで、巨視的な有限要素法 (FEM)と原子スケールの分子動力学法 (MD)を連携させるシミュレーション手法によるナノ金属多結晶の変形挙動のメカニズムに関する研究について説明しました。また住友ゴム工業の内藤正登博士が、「マルチスケールシミュレーションを活用した次世代タイヤ材料の開発」と言うタイトルで、タイヤ用のゴムの内部発熱予測、強化ゴムの開発や高機能ゴムの開発における大型計算機の活用について述べました。
「放射光・中性子を利用した構造材料の評価」のセッションでは、京都大学の今井友也教授が「生物の材料作り-セルロース合成酵素に学ぶ-」と題して、X線小角散乱法を用いたセルロース合成酵素の機能に関する研究について説明しました。次に秋山精鋼株式会社の西田智博士が「中性子線・X線を利用した鉄鋼丸棒の引抜き加工の残留応力解析」と言うタイトルで、引き抜き材の残留応力に関する中性子線を用いた測定、有限要素法を用いた解析や、X線と有限要素法の組み合わせによる評価結果を紹介しました。その後、会場の部屋を移して、ポスターセッションとともに講演者との意見交換や利用相談、情報交換等が行われました。
今回のシンポジウムは前回と同様に現地参加とオンラインのハイブリッドで行われ、64名の現地参加と86名のオンライン参加がありました。そして参加者からのアンケート調査の結果、内容は「とても良い」が28%、「良い」が57%で、85%の参加者の満足度が高かったことが分かりました。また7割以上の参加者が、SPring-8やMLFと富岳の連携利用の意思がある、と回答しました。



