研究生滞在報告 電気通信大学日野氏
【テーマ:中性子小角・広角散乱装置「大観」を用いた中性子小角散乱実験の実習】
研究開発部 大石 一城
実習の背景と目的
電気通信大学の日野 豊さんをCROSS研究生として受け入れました。日野さんは大型実験施設での実験は今回が初めての経験となります。本実習では、J-PARC MLFにある中性子小角・広角散乱装置「大観」を用いた実験への参加、および取得したデータの解析コード作成を主軸に、試料環境機器の操作や物性測定など、多角的な実習を行いました。
予期せぬトラブルから学んだ「試料環境」の重要性
2024年6月末、日野さんは冷凍機を用いた実験に参加予定でしたが、直前に中性子源の不具合によりビームが停止。残念ながら中性子を用いた測定は実施できませんでした。しかし、この期間を無駄にせず、座学によるJ-PARCや「大観」の解説に加え、急遽「4T超伝導磁石」の冷却試験に立ち会ってもらいました。ビームが出ている時だけが実験ではなく、それを支える試料環境機器の準備と試験がいかに重要であるかを、実体験として学んでもらう機会となりました。
2024年度後半は中性子源の不具合により2024B期がキャンセルされるという不運も重なり、日野さんにとっては「消化不良」な1年目となってしまいました。そこで、心機一転、2025年度も継続してCROSS研究生として受け入れることになりました。
念願のオペランド実験とPythonによるデータ解析
2025年度はついに中性子を用いた実習が本格化しました。5月と1月には、「大観」にてナトリウムイオン電池負極材料の「オペランド中性子小角・広角散乱実験」に参加。初めてのビーム実験にわくわくしつつ、装置の操作や試料の設置など、現場での作業に真剣に取り組んでもらいました。11月には、オペランド実験の精度を高めるため、各構成要素(電極、セパレーター、電解液等)の基礎測定も実施しました。
データ解析においては、Google Colabを用いたPythonによる解析コードの作成に挑戦してもらいました。プログラミングは未経験とのことでしたが、先行研究(ハードカーボン)の結果を参考に、Zoomでのリモート打ち合わせや、CROSSおよび電気通信大学での対面打ち合わせを重ね、自力で解析・プロットまで行えるようになりました。粘り強くコードに向き合う姿勢には、指導側としても感銘を受けました。
多角的な経験と今後の期待
中性子実験の合間には、ユーザー実験準備室のPPMS(³He冷凍機)を用いた比熱・電気抵抗率測定も実施し、さらに11月には「第14回AONSA中性子スクール/第9回中性子・ミュオンスクール」にも参加しました。中性子科学の基礎から応用まで、幅広く吸収してくれたと感じています。
大学の研究室とはスケールも手法も異なる大型実験施設での実験には、楽しさだけでなく、特有の大変さもあったはずです。この約1年9ヶ月間の経験を、ぜひ今後の研究生活に活かしてほしいと願っています。日野さんからは、2026年度もCROSS研究生として中性子実験に従事したいとの提案がありましたので、今年も一緒に実験を実施できることを楽しみにしています。
最後に、「自分も大型実験施設で中性子実験をやってみたい!」と興味を持たれた学生さんがいらっしゃれば、ぜひお気軽にCROSSまでご連絡ください。


