私は2026年5月11日から5月15日までの計5日間、一般財団法人総合科学研究機構 (CROSS) 中性子科学センターに研究生として滞在し、重水素化物合成と中性子反射率データ解析の実習をさせていただきました。
私は、中性子散乱を用いて、アニオン/両性界面活性剤混合系における、各分子の界面への吸着挙動および溶液中での会合挙動を研究しています。アニオン界面活性剤は、両性界面活性剤と混合することで相乗効果が生じるため、洗浄剤や化粧品などの産業分野で広く応用されています。これらの応用においては、界面活性剤混合系が形成する会合体構造や界面構造が製品の機能性や安全性に影響するため、ナノスケールでこれらの構造を理解することが重要です。私は、コントラスト変調によって混合する二成分を識別することで、界面構造および会合体構造のより詳細な解析を目指しています。本実習では、今後の中性子散乱での利用を目的とした、重水素化界面活性剤の合成と中性子反射率データの解析実習に取り組みましたので、その活動内容についてここに報告いたします。
実習では、CROSS 阿久津和宏氏の指導のもと、不均一系触媒を用いたアニオン界面活性剤の直接的重水素化と重水素化率の測定を行いました。実験の結果、90%を超える重水素化率を有する目的物を得ることができました。さらに、本反応における副反応の進行を確認し、収率低下の要因を特定することができました。さらに、界面活性剤混合系の固/液界面における中性子反射率データの解析実習にも取り組み、濃度変化に伴って固/液界面で形成する界面活性剤膜の形状が異なることを確認しました。
実習2日目には柴山充弘センター長とのディスカッションの機会をいただき、これまでに取得した中性子散乱データについて多くの貴重なご意見を頂戴しました。その中で、多くの示唆をいただき、今後の研究の発展につながる貴重な経験となりました。また、実習成果発表会では、CROSSの方々と本実習の成果について議論させていただき、専門家との議論を通じて、重水素化物への理解を深めるだけでなく、中性子散乱をはじめとする関連分野ついての知識も広げることができました。
実習中は重水素化反応に関する技術だけでなく、関連する研究分野についても丁寧にご指導いただき、多くの知識を習得することができました。加えて、測定データの解析においても多くのご助言をいただき、今後実施すべき測定や検討すべき課題が明確となりました。非常に充実した5日間となり、自身の研究を見つめなおす貴重な機会となりました。
今回の実習で得た知識と新たな知見を今後の研究に活かし、界面構造および会合体構造のさらなる理解に役立てていきたいと考えています。
最後になりましたが、今回の実習を受け入れてくださいました、柴山充弘センター長、日々ご指導くださった阿久津和宏氏をはじめとするCROSSの皆様、そして貴重な機会を与えてくださいました吉村倫一教授に、深く感謝申し上げます。