私は2026年8月18日から8月24日までの5日間、一般財団法人総合科学研究機構(CROSS)中性子科学センターに研究実習生として滞在し、金属錯体の核磁気共鳴(NMR)測定および解析について実習をさせて頂きました。
私は、生体内で機能する金属酵素に着目し、その構造や反応性を理解するために、酵素の活性中心をモデル化した金属錯体の合成と反応性について研究しています。生体内の金属酵素では、金属イオンと周囲の配位子との相互作用によってさまざまな反応が起こります。そのため、金属酵素の構造や機能を理解するためには、活性中心を模倣した金属錯体を合成し、その構造や性質、反応性を調べることが重要となります。本実習では、研究室で合成した金属錯体のNMRによる分析法を学ぶことを目的としました。
実習では、CROSS 阿久津 和宏氏の指導のもと、金属錯体のNMR測定に必要な試料調製から、得られたスペクトルの解析までを行いました。まず、測定する試料をNMR測定用に調製し、その後、400 MHzのNMR装置(JEOL JNM-ECZ400S/L1)を用いて主に¹H NMR測定を行いました。今回測定した金属錯体には磁性を示すものも含まれていたため、一般的な有機化合物のような0~10 ppm程度の範囲だけでなく、試料の磁性の有無に応じて-60~100 ppm程度の広い範囲についても測定を行いました。また、磁気的性質を調べるため、二重管を用いた試料調製についても学び、エバンス法による磁化率測定の原理や解析の考え方をご指導いただきました。
実習を通して、NMRスペクトルを得るためには、私が普段扱うIRやUV以上に事前の条件設定や試料調製が重要だと学びました。特に磁性錯体では二重管を用いた調製や測定範囲の変更など、物質の性質に合わせた工夫が必要であることを実感しました。阿久津氏から実験データの丁寧なご指導を受けたことで、磁性錯体特有のピークの現れ方や常磁性シフトの解釈について理解することができ、得られたデータから構造や物性情報を読み取る手法を習得できました。さらに実習の最終日には、「未来を拓く J-PARC と茨城高専の科学技術研究会」にて本実習の成果を発表し、実習で得られた知見をしっかりと整理して発信する貴重な経験を得ることができました。本実習で得たNMR測定・解析に関する知見や磁気化学的な解析手法を、今後の金属錯体研究に存分に活かし、合成錯体の構造解明や機能評価を進めていきたいと考えております。
最後になりましたが、今回実習を指導していただいた阿久津氏や、実習を受け入れて下さった川北センター長はじめCROSSの方々に深く感謝申し上げます。