【開催報告】「2025年度量子ビームサイエンスフェスタ」(3月11日~13日)
第17回MLFシンポジウム、第43回PFシンポジウム
実行委員 宗像 孝司
高エネルギー加速器研究機構(KEK) 物質構造科学研究所、J-PARCセンター、総合科学研究機構(CROSS)、PFユーザーアソシエーション(PF-UA)、J-PARC MLF利用者懇談会が主催する「2025年度量子ビームサイエンスフェスタ」が、2026年3月11日から13日までの3日間、水戸市民会館にて開催されました。
量子ビームサイエンスフェスタは、放射光・陽電子、中性子・ミュオンなど、異なる量子ビームを利用する研究者、技術者、学生、施設関係者が集まり、研究成果や施設の現状、今後の量子ビーム利用について情報交換を行う場として開催されています。2015年度から始まった本フェスタは今回で11回目を迎え、607名の参加者を得て盛況のうちに終了しました。
初日の3月11日には、第43回PFシンポジウムが開催されました。PF施設報告では、施設、光源、PFリング、ビームライン、各種課題の進捗など、放射光利用を支える施設・装置の現状について報告が行われました。午後にはPF-UA総会、PF次期光源計画に関する報告、総合討論が行われ、今後の施設計画や運営に関する意見交換が行われました。また、低速陽電子実験施設(SPF)の施設報告も行われました。
2日目の3月12日には、量子ビームサイエンスフェスタが開催されました。基調講演では、一杉太郎氏(東京大学/東京科学大学)より「異分野融合のハブとしての量子ビーム施設:協働と共用の推進」と題した講演がありました。AIロボット技術の進展や実験装置の自動化・自律化を背景に、研究者がより創造的な研究活動に注力するための環境づくりと、量子ビーム施設に求められる役割について紹介されました。また、山谷泰賀氏(量子科学技術研究開発機構)より「量子科学・量子ビームが切りひらく次世代の医療」と題した講演がありました。PETやOpenPETの開発をはじめ、診断と治療の双方に量子科学・量子ビームを活用する次世代医療の展開が示されました。量子ビーム施設の共用・協働利用や、医療応用を含む幅広い分野への展開について考える機会となりました。

2日目の量子ビームサイエンスフェスタでは、基調講演、ポスターセッション、分野別の口頭発表が行われました。
午後にはポスターセッションが行われ、量子ビームを利用した幅広い研究成果が発表されました。発表者と参加者の間では、研究内容に加え、測定手法、解析、今後の展開についても意見が交わされていました。続く口頭発表では、無機材料、有機材料、イメージング、磁性・強相関、生命科学、基礎物理の6つのテーマに分かれて、研究成果の発表と討論が行われました。同日夕方には懇親会および学生奨励賞授与式が行われ、参加者同士の交流が深められるとともに、優れたポスター発表を行った学生6名が表彰されました。

ポスターセッションでは、発表者と参加者が研究内容や実験手法について意見を交わしました。

懇親会では、参加者同士が分野や所属を越えて交流する様子が見られました。
最終日の3月13日には、第17回MLFシンポジウムが開催されました。午前の施設報告では、大友MLFディビジョン長による「J-PARC MLFの現状」に続き、中性子源・中性子利用、MLF MUSEにおけるミュオン利用、データ収集や装置制御を支える基盤技術について報告が行われました。また、パルス中性子スピンエコー小角散乱法や、高圧下非弾性中性子散乱に向けた新規圧力セルなど、実験手法の開発に関する報告もありました。MLFの安定した運用を支える取り組みと、より高度な実験利用に向けた技術開発の状況が紹介されました。

MLFシンポジウムでは、J-PARC MLFの現状、装置・手法開発、利用環境に関する報告が行われました。
午後にはMLF利用者懇談会が開かれ、総会に続いて、要望・アンケート報告が行われました。その後のMLF成果発表では、磁性研究、中性子光学、燃料電池材料の構造解析、半導体検出器、偏極技術など、MLFを利用した研究成果と関連技術開発に関する講演が行われました。中性子・ミュオンを用いた研究の広がりに加え、実験・解析を支える技術開発の重要性も示されました。
今回のフェスタでは、量子ビームを利用した多様な研究成果に加え、J-PARC MLFの利用環境、装置・手法開発、ユーザーからの要望などについて理解を深める機会となりました。
開催にあたり、ご参加いただいた皆様、講演・発表をいただいた皆様、ならびに開催・運営にご尽力いただいた事務局および関係各位に御礼申し上げます。