J-PARC初の産学連携コンソーシアムを結成
― 中性子を利用し、機能性高分子材料の開発を目指す ―

2019.04.11

J-PARC初の産学連携コンソーシアムを結成
― 中性子を利用し、機能性高分子材料の開発を目指す ―

平成31年4月11日
機能性高分子コンソーシアム

発表のポイント

  • 高分子・ソフトマター業界の5つの企業グループ※1は、学術研究チーム※2と協力し、J-PARC※3初となる産学連携コンソーシアム「機能性高分子コンソーシアム」を結成し、4月5日に発足式を行った。
  • 産学連携コンソーシアムでは、機能性高分子材料評価に特化した評価装置を開発し、有機・無機ハイブリッド材料、熱硬化性樹脂、粘接着剤、燃料電池用素材などの開発を目指す。

概要

高分子・ソフトマター業界の5つの企業グループは、学術研究チーム(3大学・1大学共同利用機関法人)と協力して、大強度陽子加速器施設(J-PARC)物質・生命科学実験施設(MLF)の世界最高クラスの中性子ビームを利用し、機能性高分子材料の開発を加速するため、コンソーシアムを3月20日に結成し、4月1日から運営を開始しました。このコンソーシアムではMLFの複数のビームラインで機能性高分子材料評価に特化した評価装置を開発し、有機・無機ハイブリッド材料、熱硬化性樹脂、粘接着剤、燃料電池用素材などの開発を進めます。

なお、コンソーシアムの運営は、J-PARC特定中性子線施設登録施設利用促進機関である「一般財団法人総合科学研究機構(CROSS)※4」に委託し、J-PARCの運営主体である「J-PARCセンター(JAEAとKEKの共同組織)」にも協力を仰ぎながら進めて参ります。

背景

高分子・ソフトマター業界は、これまで放射光やスーパーコンピュータなどの大型施設を利用することで、イノベーションを創出してきました。さらなるブレークスルーを果たすためには、軽分子に敏感なこと、透過力が強いことなど放射光にはない特徴を持ったプローブが必要となりました。それが中性子です。中性子は高分子・ソフトマター内部の構造や動きを見るのに適しています。しかしながら後発のため、放射光施設などに比べると成果事例が多くありませんでした。
そこで高分子・ソフトマター業界の5つの企業グループは、産学が連携して機能性高分子材料の中性子評価技術の確立と活用を行い、イノベーション創出に寄与するという本コンソーシアムの構想に賛同し、J-PARC初の産学連携コンソーシアムを設立しました。

期待される成果

高分子・ソフトマター材料の研究開発を行なっている産学が連携して中性子の特長を生かした機能性高分子材料の評価技術を確立し、機能性高分子材料のさらなる高機能化のためのメカニズムを解明します。そしてコンソーシアム参加企業から機能向上製品につながるブレークスルーが生まれることが期待されます。また、学術研究チームからは評価技術開発を先導するとともに、確立した評価技術を使い先行的な研究を行うことで、新たな機能性高分子研究のパラダイムが生み出されることが期待されます。

用語解説

5つの企業グループ
クラレグループ(株式会社クラレ)、住友ベークライトグループ(住友ベークライト株式会社)、DICグループ(DIC株式会社)、 日産化学グループ(日産化学株式会社)、三井化学グループ(三井化学株式会社)
学術研究チーム
  • 国立大学法人 九州大学大学院工学研究院 教授 田中 敬二
  • 国立大学法人 九州大学大学院工学研究院 准教授 川口 大輔
  • 国立大学法人 三重大学大学院工学研究科 教授 鳥飼 直也
  • 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所 J-PARC MLF 教授 金谷 利治
  • 国立大学法人 名古屋工業大学大学院 准教授 山本 勝宏
J-PARC
大強度陽子加速器施設(Japan Proton Accelerator Research Complex)。日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が茨城県東海村で共同運営している先端大型研究施設で、素粒子・原子核物理学、物質科学、生命科学などの幅広い分野の世界最先端の研究が行われている。J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)では、世界最高クラスのパルス中性子およびミュオンビームを用いた物質科学、生命科学の学術研究および産業応用研究が行われている。
一般財団法人総合科学研究機構(CROSS)
「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」に基づくJ-PARC特定中性子線施設登録施設利用促進機関として、J-PARC MLF内にある共用ビームラインの利用者選定、利用支援などの利用促進活動を行なっている。

本件に関する問合せ先

機能性高分子コンソーシアム事務局
一般財団法人総合科学研究機構
広報担当
E-mail:press[at]cross.or.jp
TEL:029-219-5310(内線3710, 4207)
FAX:029-219-5311

[at]を”@”に置き換えてください。