β-グルコシダーゼの中性子構造解析により未知の反応機構を解明
― バイオマス利用に向けた酵素設計の基盤を提供 ―
2025年10月31日
発表のポイント
- バイオマス分解酵素の反応中間体を中性子解析で可視化
- 水素原子レベルでの構造変化を世界で初めて確認
- 未知の構造変化による反応メカニズムを発見 — 酵素利用技術への応用に期待
概要
β-グルコシダーゼは、セルロースなどのバイオマスを構成する糖鎖を最終的に分解する重要な酵素です。なかでも「Td2F2」と呼ばれるβ-グルコシダーゼは、高い耐熱性とグルコース耐性を併せ持つ有用な酵素です。β-グルコシダーゼは、糖鎖を切断する際に基質と一時的に共有結合を形成することが報告されていましたが、水素原子を含む構造に基づいた詳細な反応機構は明らかになっていませんでした。JASRIの矢野直峰研究員と東京大学大学院農学生命科学研究科の伏信進矢教授らの研究グループは、理化学研究所の石渡明弘専任研究員、筑波大学の高谷直樹教授、CROSSの日下勝弘副主任研究員(当時)らとの共同研究により、茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARC内の茨城県生命物質構造解析装置(iBIX)を用いて、Td2F2の中性子結晶構造解析を実施しました。その結果、反応の前・中・後に相当する三つの状態の構造を世界で初めて中性子を用いて明らかにしました。さらに、基質の結合に必要な水素結合ネットワークを可視化するとともに、これまで知られていなかったチロシン残基の新たな役割を解明しました。本成果は、多くの糖質分解酵素に共通する反応機構の理解を深めるとともに、酵素の改良や産業利用に向けた技術開発の基盤となる重要な知見です。
詳細は東京大学農学部のホームページをご覧下さい。