令和5年度理事長表彰 町田氏、林田氏、笠井氏、新妻氏が受賞

2023.11.15

令和5年度理事長表彰 町田氏、林田氏、笠井氏、新妻氏が受賞

表彰式の様子。左から町田氏、林田氏、横溝理事長、柴山センター長、笠井氏、新妻氏

2023年10月31日、理事長表彰賞の表彰式を行いました。本表彰は、総合科学研究機構に勤務する職員等の中で顕著な功績を挙げたものに対し、その功績をたたえ、感謝の意を表し、CROSSが担う業務の更なる推進を図ることを目的としています。

今年度の受賞者は町田氏、林田氏、笠井氏、新妻氏でした。受賞者には盾が贈られ、受賞講演が行われました。それらの様子をオンラインで配信しました。

研究開発部 町田 真一(副主任研究員)

受賞テーマ:「ダイヤモンドアンビルセルを使った超高圧中性子実験法の開発」

受賞理由

表彰式の様子

J-PARC, MLFの超高圧中性子回折装置(BL11 PLANET)では、6軸プレスや中型プレスの利用による幅広い圧力範囲の回折実験が行われているが、これらの高圧装置の最大発生圧力は20 GPa程度であり、これを超える高圧下での中性子実験が多くのユーザーから要望されている。

町田氏は、超高圧発生が可能なダイヤモンドアンビルセル(DAC)を使った中性子実験を主導し、中性子実験に必要となる従来のDACの10倍以上の試料体積を加圧することが可能なDACを開発することにより、70 GPaまでの超高圧発生に成功した。また、ダイヤモンドアンビルに由来するBragg反射や吸収を補正するソフトウェアを整備することによって高圧試料の回折ピークを高精度で取得することに成功し、リートベルト解析による精密構造解析を可能にした。さらに、回折を出さないnull合金を用いたDAC用のガスケット材を開発することによって、試料以外のバックグラウンド強度を低減させることにも成功しており、これらの成果を以下の論文で報告している。(“Investigation of null-matrix alloy gaskets for a diamond-anvil-cell on high pressure neutron diffraction experiments”, S. Machida, S. Nakano, High Pressure Research 42 (2022) 303-317.)

以上より、町田氏はDACを使った超高圧中性子実験法の開発において、特に顕著な業績を上げたため、今年度の理事長表彰に値すると認められた。

研究開発部 林田 洋寿(副主任研究員)

受賞テーマ:「燃料電池のイメージングに関する利用支援」

受賞理由

表彰式の様子

現在、世界中で燃料電池に関する研究が進められているが、J-PARCでも構造からダイナミクス、そしてイメージングなど、CROSS共用ビームラインでも研究が進められている。林田氏らは、ビームライン側の主担当として2016年から1年以上かけて水素利用のルール策定を行い、MLFにおいて燃料電池発電実験を初めて実現した。論文執筆においては中性子イメージングデータの解析に携わり、特に透過率から水の厚みを定量評価する際に、水のインコヒーレント散乱による影響を見積もる点において尽力した。それらが結実した論文は、MLFにおいてはじめて燃料電池発電時における水分布を可視化した成果であり、流路付きGDLを用いた燃料電池の実用に向けた燃料電池業界でも世界初の試みとなる成果であった。高いインパクトファクター(9.794)の雑誌に掲載が認められた。 (“Neutron imaging of generated water inside polymer electrolyte fuel cell using newly-developed gas diffusion layer with gas flow channels during power generation”, Mitsunori Nasu et al., Journal of Power Sources 530 231251 (2022).)

その後、JAEA篠原氏の主導により、豊田中央研究所、本田技術研究所、FC-Cubicなど多くの自動車会社が燃料電池実験を実施しており、水素利用のルールを取り決めたことで今日の多くの課題に対しても貢献できている。

以上のように、林田氏は燃料電池のイメージングに関する利用支援により、特に顕著な業績を上げたため、今年度の理事長表彰に値すると認められた。

研究開発部 笠井 聡

受賞テーマ:「実験監視・リモートデータ解析システムの開発」

受賞理由

表彰式の様子

Covid-19の流行により、リモート実験やリモートデータ解析の必要性がJ-PARC MLFにおいても高まっているが、偏極中性子反射率計BL17写楽ではビームラインの実験状況確認やデータ解析を外部から行う方法がなく、リモート化が長年の課題となっていた。

解析情報グループの笠井氏は、BL17における測定中の反射率データや実験条件(温度、湿度、磁場など)をオンラインで確認できるリモート監視システムと、webブラウザで中性子の生データを反射率に変換するためのweb解析システムを構築した。これらのシステムは、webブラウザベースで構築することで非常に軽快に動作する他、データのアクセス制限を設定することで他のユーザーのデータにはアクセスできない仕組みになっており、データのセキュリティ対策も徹底されている。これにより、いつでも・どこでも実験監視およびデータ解析が可能になったことで実験中・実験後の利便性が向上し、ユーザーから好評を得ている。

これらのシステムはMLFのリモート環境の整備として非常に重要な開発成果と考えられ、今後、他のビームラインにも展開できると期待される。

以上のように、笠井氏はリモート実験監視、データ解析システム開発により顕著な業績を上げたため、今年度の理事長表彰に値すると認められた。

利用推進部 新妻 秀之

受賞テーマ:「ハイブリッド方式の課題を克服して円滑な会議を実現」

受賞理由

表彰式の様子

新妻氏は、ハイブリッド方式の研究会、会議において新たに出現した難しい技術課題を、自身の見識と技術を使って克服し、会議の円滑な実施に大きく貢献した。

COVID-19パンデミックは2020年からの3年間で会議を一変させた。2022年以降、CROSSが携わるほぼ全ての研究会、会議は会場とオンラインの両方で講演、聴講が行われるハイブリッド型となった。ハイブリッド型会議の円滑実施には、会場・オンラインそれぞれ音声、映像を適切に選択し確実に届ける必要があるが、会場によって音響・映像機器の設備が異なるため、これは至難の課題である。新妻氏は自身のPCや音響・映像機器に関する見識、技術を背景に、多大な努力を傾注して上記課題を解決する機器構成を提案、整備し、入念なテストを行い、機器の運用に従事した。これにより、中性子産業利用報告会、中性子・ミュオンスクールなどのCROSSとJ-PARC MLFにとって重要性の高い会議等を円滑に開催することが出来た。

また、自身が現地に赴かない会議においても、担当者らから要望、条件を的確に聞き取り、機器の準備、使用方法の説明を行うことで、担当者らで円滑な会議を実施できるように支援した。波及効果はCROSS内に留まらない。

以上により、新妻氏の貢献が理事長表彰に値すると認められた。
※携わった件数 令和4年度:6件、令和5年度:3件


表彰式後の集合写真

多くの方がが出席され、授賞講演に関心を寄せていました。

<過去の表彰について>

・第3回センター長表彰を五十嵐氏、宮田氏、山田氏、小西氏、富永氏受賞
・第2回センター長表彰を岩瀬氏、松浦氏受賞
・第1回センター長表彰を阿久津氏、岡﨑氏受賞