2023.12.05
【開催報告】The 11th Workshop on NEUtron WAVElength Dependent Imaging (NEUWAVE-11)
研究開発部 林田洋寿
主催:J-PARCセンター、CROSS
協賛:中性子産業利用推進協議会
2023年10月22日(日)~2023年10月26日(木)の日程で、国際ワークショップNEUWAVE-11が開催された。また、サテライトミーティングとして、10月27日(金)にブラッグエッジイメージング法の解析ソフトウェアRITSコードの講習会が行われた。
本ワークショップは中性子透過率の波長依存性を利用したイメージング技術に関するワークショップであり、世界の主要中性子施設、大学の研究者が一堂に会して情報交換をすることにより、中性子イメージング技術の高度化や新技術の開発、応用研究を協力して推進することを目的としている。第1回目が2008年にGarching(ドイツ)で開催されたのを契機に、英国、日本、米国、スウェーデン、スイスで開催されてきた。2019年に第10回ワークショップが開催されて以降、COVID-19の影響により延期が続いていたが、この度第11回目を開催することができた。4年ぶりの開催ということもあり、これまでは40~60名の参加者数であったのに対して、今回の参加者は過去最多の90名に上った。内訳は、国内研究機関所属者が40名、海外研究機関所属者が50名であった。海外研究機関の国別の内訳は、米国11名、スイス7名、ドイツ6名、中国5名、デンマーク5名、英国4名、スウェーデン3名、韓国4名、フランス1名、アルゼンチン2名、イタリア1名、チェコ1名となる。
初日の10月22日(日)はWalking Discussionが行われた。参加者間で研究の議論をしつつ親睦を深め、2日目以降の議論を活発化させることを目的としており、今なお続く伝統行事となっている。今回は芝浦ふ頭駅を出発して、レインボーブリッジを徒歩で渡りお台場海浜公園をゴールとするコースであった。海外からの参加者はもちろんのこと、国内からの参加者も初めてレインボーブリッジを徒歩で渡ることとなり、研究の議論はもとより、レインボーブリッジからの眺望に対する感動を共有することができ、大変好評であった。
2日目の10月23日(月)から4日目の10月25日(水)までの3日間が会議の期間であった。口頭発表35件、ポスター発表35件と、過去最多の発表件数であった。口頭発表では施設報告10件、ブラッグエッジイメージング 8件、共鳴吸収イメージング 2件、偏極イメージング 2件、回折格子イメージング 4件、検出器開発 2件、ソフトウェア開発 4件、応用研究 2件の発表が行われた。施設報告ではMLFを始め、SNS、ESS、ILL、PSI、NIST、HUNS、CARR※など世界各施設の中性子イメージング装置の現状及び開発状況が報告された。また、波長依存性を利用したエネルギー分析型イメージングの代表的な手法の開発、利用成果として、ブラッグエッジ、共鳴吸収、偏極イメージングから多くの成果発表が行われた。特にブラッグエッジイメージングは結晶組織情報を可視化できる手法として応用例が多く、国内外を問わずニーズが高いことが伺われた。また、応用研究として燃料電池の水/氷識別の研究成果が報告された。これは水と氷では中性子の非弾性散乱断面積が異なるという性質があり、かつ、冷中性子領域でこの差が顕著になる性質を利用した技術であり、今回報告されたトピックスの中でも新規性の高い利用成果であった。
5日目の10月26日(木)はMLFとJRR-3の見学ツアーが行われた。参加者は30名であった。まずJRR-3ガイドホールを見学した後、MLFに移動し、BL15、BL17、BL18、BL19、BL22およびターゲット(MLF玄関)を見学した。JRR-3の滞在時間は約30分で、MLFの各ビームラインの滞在時間は約15分であった。多くの研究者が実際の装置を間近にして多くの質問をしており、充実した時間を過ごすことができた様子であった。
6日目の10月27日(金)はサテライトミーティングとしてブラッグエッジイメージングデータ解析ソフトRITSコードの講習会が行われ、参加者は21名であった。午前中はRITSコードの開発者である北海道大学の佐藤博隆准教授、およびRITSコードを用いた多くの解析経験を有する原子力機構の及川健一氏による講義が行われ、午後は実データを用いた解析トレーニングが行われた。会議の口頭発表件数でも報告した通り、ブラッグエッジイメージングに興味を持っている研究者は多く、非常に充実した時間を過ごした様子であった。本講習会を契機に今後の更なるユーザー拡大に期待を持てる印象であった。
今回のNEUWAVE-11に対して多くの参加者から「大変満足した。初日から最後のRITS講習会まで、全てが素晴らしかった。どこをとってもパーフェクトだった。」とのコメントを多くいただくことができた。主催者冥利に尽きる誠に有難いコメントであったが、しかしながら多くの方々から賜った多大なるご支援なくしては、本会議を成功裏に終えることは叶わなかった。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
※SNS:オークリッジ国立研究所(アメリカ)、ESS:欧州核破砕中性子源(スウェーデン)、ILL:ラウエ・ランジュバン研究所(フランス)、PSI:パウル・シェラー研究所(スイス)、NIST:アメリカ国立標準技術研究所(アメリカ)、HUNS:北海道大学中性子源(日本)、CARR:中国先進研究炉(中国)