CROSS研究生体験記  九州大学 綿谷氏、外園氏、今村氏、石松氏

2024.04.04

CROSS研究生体験記  九州大学 綿谷氏、外園氏、今村氏、石松氏

九州大学 大学院総合理工学府 修士課程2年 綿谷 敦志
工学部 4年 外園 駿介
工学部 3年 今村 謙吾
工学部 4年 石松 佳樹

我々4名は2023年9月11日から9月15日までの5日間、一般財団法人総合科学研究機構(CROSS)中性子科学センターの研究生として花島隆泰研究員の指導のもと、中性子反射率の測定データから、測定試料の磁気構造を導出する方法を学びました。この体験に基づいて、今回の経験について報告いたします。

この実習で取り扱った試料は、ダイヤモンドを使用したスピントランジスタです。スピントランジスタは、従来のトランジスタとは異なり、ソース・ドレイン電極に強磁性体材料を使用するデバイスであり、ゲート電圧だけでなく、ソース・ドレイン電極の磁化状態によっても情報を保持できるため、電力の損失が発生しないデバイスを実現する可能性があります。我々は、ダイヤモンドと強磁性体のオーミック接触を利用して、ダイヤモンドへのスピン注入およびスピンの検出、そしてスピン輸送長がどの程度なのかを測定する研究を行っています。この期間の滞在で、我々は中性子反射率を使用した固体界面の測定方法について学び、他の測定方法と比較してどのような利点があるか、なにを観察できるのかを勉強する貴重な経験を得ることができました。

BL17分光器室内の様子

MLF実験ホールの様子

実習における研究ディスカッションの様子



実習では、中性子反射率を使用して磁気構造解析の学習だけでなく、J-PARC MLF実験施設見学、研究テーマに関連する試料についてどのような測定ができるかについての議論、溶液の固液界面測定の聴講を行いました。

偏極中性子反射率を使用した磁気構造解析の学習では、中性子反射率の基本から学びました。中性子とX線の比較、中性子反射率のシミュレーション方法、測定対象についての基礎的な知識を得ました。その後、中性子反射率の解析ソフトウェアGenXの使い方や、核散乱長密度および磁気散乱長密度の導出方法について学び、不明点があるたびに丁寧に教えていただきました。

J-PARC MLF実験施設見学では、ビームラインや実験ホールを見学するとともに、実際の実験がどのように行われているか、偏極ビームを使うための磁場接続、遮蔽体について確認できました。

研究テーマについては、偏極中性子反射率解析のための構造モデルを構築し、スピン流から磁気モーメントの値を求め、偏極中性子反射率によるスピン流検出の実現可能性について議論しました。得られたシミュレーションと現状の試料サイズより、現状のままの試料では偏極中性子反射率によるスピン流検出は困難であることが明らかとなり、実際の測定に向けた試料合成の課題が明確になりました。

最後に、この実習を受け入れていただいた柴山充弘中性子科学センター長、指導していただいた花島隆泰氏に深く感謝申し上げます。また、指導教員の吉武剛教授には、中性子科学センターでの貴重な実習の機会を与えていただき、深く感謝申し上げます。

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