CROSS研究生滞在報告【テーマ:重水素化イオン液体の合成とNMR法による分析】

2021.11.12

CROSS研究生滞在報告

研究開発部 阿久津 和宏

左から柴山センター長、石井さん、阿久津

左から柴山センター長、石井さん、阿久津

「重水素化イオン液体の合成・分析法を体験し、自身の中性子反射率実験に使用するための重水素化試料合成の技術を修得する」と言う志望動機を持って京都大学工学研究科 修士課程2年 石井浩介さんが、CROSS中性子科学センター研究生として、2021年10月18(月)〜22日(金)に実習を行いました。


実習内容

実習の初日は簡単な実習概要説明と安全教育を受けた後、実習スケジュールの作成を行い、夕方から1回目の重水素化実験を開始しました。2日目は1回目の重水素化実験が終了し、重水素化率分析のための1H NMR分析を行いました。その結果、得られた物質の重水素化率は19%程度と見積もられました。この値は想定よりも低く、実験条件の変更を余儀なくされました。3日目は反応効率を上げるための実験条件を議論し、それに従って2回目の重水素化実験を開始しました。4日目は阿久津氏による中性子の基礎及び応用などの講義を受講し、中性子反射率法に関する理解を深めるとともに、2回目の重水素化実験の後処理を実施しました。最終日には2回目の実験で得られた物質の重水素化率を分析し、42%程度の重水素化物が生成したことを確認しました。重水素化率の改善が見られたことで、更なる高純度の重水素化物合成に向けた道筋が見えてきました。最終日の実習報告会では、柴山センター長、西准教授(京都大学)ら参加者と発表内容に関する討論や中性子反射率法に関する有意義な意見交換を行いました。

実習の様子

実習の様子


研究生を終えての感想

石井さん

こちらの記事をご覧下さい。

阿久津氏

石井さんには、実習初日に設定した実験計画に従って重水素化実験を実施して貰いましたが、1回目の実験で得られた重水素化物は想定より重水素化率が低く、途中から実験条件変更の議論を行いました。石井さんは、1回目の実験で反応効率が低かった原因やその対策方法に対して積極的に意見を提案してくれました。その結果、最終的には重水素化率が42%程度の化合物を得ることができました。今回の実習では高い重水素化率のイオン液体の合成には至りませんでしたが、2回の実験で得られたデータから高い重水素化率のイオン液体を合成する方法が分かってきました。今回の実習で得た知見を今後の重水素化研究に活用したいと考えます。