J-PARC中性子線施設における元素戦略プロジェクト利用とトライアルユース利用の重点分野利用制度を新設

2012.08.22

J-PARC中性子線施設における元素戦略プロジェクト利用と
トライアルユース利用の重点分野利用制度を新設


平成24年8月22日
一般財団法人総合科学研究機構
J-PARCセンター

一般財団法人総合科学研究機構(理事長 西谷隆義、以下「CROSS(クロス)」)はJ-PARC※1センター(センター長 池田裕二郎)と連携協力して、中性子利用研究者の研究課題公募・利用者支援などを行っています。本年度後期(2012B期:平成24年10月~平成25年3月)から、文部科学省が推進する課題解決型の「元素戦略プロジェクト〈研究拠点形成型〉※2」利用と初心者入門型の「トライアルユース※3」利用の重点分野利用※4を新しく始めます。

CROSSは、独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之、以下「JAEA」)と大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(機構長 鈴木厚人、以下「KEK」)の共同運営施設であるJ-PARCの物質・生命科学実験施設※5(以下、「MLF」)の登録施設利用促進機関※6として、現在稼働中のビームライン18本の内、5本のビームライン(以下、「共用ビームライン※7」)を平成23年度から国内外の大学、民間企業及び公的研究機関などに所属する研究者等の利用に供するために、利用研究課題の募集、利用者の支援などの利用促進業務を行ってきました。

この度、文部科学省が推進する「元素戦略プロジェクト〈研究拠点形成型〉」の研究拠点が決定したことを受け、共用ビームラインではこれまでの一般利用課題枠※8に加えて元素戦略プロジェクト専用の利用課題枠を設け、本年度後期(2012B期)から実験を実施することになりました。

元素戦略プロジェクト〈研究拠点形成型〉とは「磁石材料」、「触媒・電池材料」、「電子材料」、「構造材料」の4つの領域からなる今年度から始まった10年間の国家プロジェクトであり、レアアースやレアメタル等を用いない革新的な稀少元素代替材料の創製を行う最先端の実験などがJ-PARCのMLFで実施されることになります。

一方、これまでパルス中性子線※9を利用したことのない研究者等に対しても、事前相談から申請書の書き方、実験終了後のデータ解析までをサポートする「トライアルユース利用」枠を設け、同じく2012B期から実験が開始されます。

CROSSでは、共用ビームラインによるこれらの2つの利用枠を併せて「重点分野利用」と定義し、課題解決型の最先端研究に寄与する一方、パルス中性子線の未経験者にも門戸を開くことで、利用者と利用分野の裾野拡大にも寄与します。

利用課題申請(2013A期:平成25年4月~7月)は、以下の応募先より募集を行います。

  • 元素戦略プロジェクト〈研究拠点形成型〉
  • 一般利用課題
    応募先:http://is.j-parc.jp/uo/
    申請受付期間:平成24年10月17日~平成24年11月7日
  • トライアルユース利用
    応募先:http://www.cross-tokai.jp/ja/
    申請受付期間:平成24年9月1日~平成24年10月15日

平成23年3月の大震災以降、設備の復旧に務め、平成23年度後期(2011B期:平成24年1月~3月)から共用運転を再開しましたが、今年度に入ってパルス中性子線利用の申請課題数が急増しており、2012B期は100件以上増えて250件に達しました。

 

本件に関する問合せ先

一般財団法人 総合科学研究機構
東海事業センター 利用推進部
浅井 利紀
Tel: 029-219-5300Fax: 029-219-5311Email: [email protected]

J-PARCに関する問合せ先

J-PARCセンター 広報セクション
セクションリーダー
坂元 眞一
Tel: 029-284-3587Fax: 029-282-5996
Email: [email protected]

用語解説

J-PARC (ジェイパーク)
JAEAとKEKが共同で茨城県東海村に建設、運営を行っている世界最大規模の陽子加速器群と実験施設群の呼称で、Japan Proton Accelerator Research Complexの略称。加速器で加速された陽子を標的の水銀および炭素などの原子核に衝突させ原子核を破壊することで発生する中性子、ミュオン、中間子、ニュートリノなどの粒子を利用し最先端の研究や産業利用を行っている実験施設。
元素戦略プロジェクト〈研究拠点形成型〉
文部科学省が実施する、我が国の産業競争力強化に不可欠である革新的な希少元素代替材料を開発するため、物質中の元素機能の理論的解明から、新材料の創製、特性評価までを密接な連携・協働の下で一体的に推進するためのプロジェクト。平成24年度から開始する〈研究拠点形成型〉には、「磁石材料」(拠点設置機関:物質・材料研究機構)、「触媒・電池材料」(拠点設置機関:京都大学)、「電子材料」(拠点設置機関:東京工業大学)、「構造材料」(拠点設置機関:京都大学)の4つの領域がある。
トライアルユース
一般の方になじみの薄いパルス中性子施設を活用していただくための体験利用的な取り組み。パルス中性子実験の裾野を広げることで利用者が拡大し、将来的には質の高い研究成果を生み出すことを目的に設けられた利用枠。共用ビームラインの年間運転時間のうち最大5%がトライアルユース利用枠に割り当てられる。
重点分野利用
国家プロジェクト(今回は元素戦略プロジェクト〈研究拠点形成型〉)及びトライアルユース利用の推進のために設けられた利用枠のこと。共用ビームラインの年間運転時間のうち最大15%が元素戦略プロジェクトに割り当てられる。
物質・生命科学実験施設(MLF:Materials and Life Science Experimental Facility)
J-PARCの実験施設群の1つで、中性子やミュオンを利用し物質科学/生命科学を研究するための研究施設。
平成24年8月現在、ミュオンを利用する実験ビームラインが2本、中性子を利用する実験ビームラインが18本稼働中。
登録施設利用促進機関
「特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律」で定められた特定先端大型研究施設の業務のうち、「施設利用研究を行う者の選定及びこれに附帯する業務」(利用者選定業務)、「施設利用研究の実施に関し、情報の提供、相談その他の援助」(利用支援業務)を行うための機関。特定先端大型研究施設には特定放射光施設(SPring-8)、特定高速電子計算機施設(次世代スーパーコンピューター「京」)、特定中性子線施設(J-PARC/MLF)があり、それぞれの施設ごとに登録施設利用促進機関が設けられている。CROSSは、平成23年4月からJ-PARC/MLFの登録施設利用促進機関として業務を開始した。
共用ビームライン
MLFで稼働している中性子を利用する実験ビームラインの内、1番(名称:四季)、2番(DNA)、15番(大観)、17番(写楽)、18番(千手)の5本(平成24年現在)が国内外の研究者の利用に供されている共用ビームライン。J-PARCの登録施設利用促進機関であるCROSSが利用者選定、利用者支援の業務を請け負っている。
一般利用課題枠
課題の応募対象者を限定せず、広く国内外の大学、民間企業及び公的研究機関などに所属する研究者などとした利用枠のこと。さらに、実験で得られた成果を論文など外部発表することが義務付けられた「成果公開型」(利用料金免除)と得られた成果を占有する「成果非公開型」(利用料金非免除)に分かれる。共用ビームラインの年間運転時間のうち最低60%が一般利用枠に割り当てられる。
パルス中性子線
短い時間幅の中性子がビーム状に連続して発生するビームのこと。J-PARCでは25Hz(1秒間に25回)で中性子が発生している。