CROSS研究生滞在報告 マドリード・コンプルテンセ大学(スペイン) Alshalawi氏
研究開発部 大石一城
2023年4月~7月の3か月にわたり、マドリード・コンプルテンセ大学 博士課程のDhoha Alshalawiさんが、CROSS研究生としてJ-PARC物質・生命科学実験施設(MLF) BL15中性子小角・広角散乱装置「大観」での中性子実験、及び、BL20 iMATERIAで昨年度測定した実験データの解析に取り組みました。
Dhohaさんはサウジアラビアのご出身とのことで、来日後には自己紹介セミナーを開催し、ご自身の研究内容の紹介のほか、サウジアラビア及びスペインの紹介をしてもらいました。サウジアラビアは同じアジアではありますが、訪問する機会が稀な国でもあり、聴衆の皆さんも興味深く聞き入っていました。こちらの記事も参照ください。
さて、Dhohaさんには、2つの研究テーマに取り組んでもらいました。一つ目は、スペインのサラゴサ大学のJavier Campo教授との共同研究で行っている「カイラル磁性体の研究」です。6月8日から15日の期間、BL15大観にて中性子小角散乱実験に取り組みました。実験では、7 T超伝導マグネットを用いて交流帯磁率で観測された低温・高磁場相における新しい相を調べる実験を実施しました。また、二つ目のテーマは、2023年1月にBL20 iMATERIAで測定したデータの解析です。実験時にはDhohaさんは来日されず、Dhohaさんが作製した試料をCampo教授が持参して実験しました。このテーマは、Dhohaさんの博士論文テーマである量子スピン液体に関連します。結晶構造解析には、茨城大学フロンティア応用原子科学研究センターの星川晃範准教授に議論に加わっていただきました。星川先生の適切な助言のもと解析を行うことにより、データをまとめることができました。
7月11日には、3か月間のCROSS研究生のまとめとして、成果発表会を行いました。Dhohaさんは、この滞在中に初めて中性子実験を経験し、大学の研究室での実験とはまた一味違う体験ができ、大型実験施設の面白さや大変さを実感できたのではないかと思います。帰国後は、博士論文審査会に向けて集中されるとのことでした。この3か月間で得たiMATERIAの解析結果を十分に活用してほしいです。
Dhohaさんは今回、初めての来日でした。CROSS及びJ-PARCでの研究活動に加え、日本文化を積極的に体験されていました。また、CROSSのメンバーの方にも、研究活動のみならず週末のイベントなどご協力いただきました。この場をお借りしまして、感謝申し上げます。
Dhohaさんの来日により、CROSSとサウジアラビア・スペインとの交流の機会が生まれました。CROSS及びJ-PARCで過ごした3か月の経験がDhohaさんのこれから研究生活を進めていくうえで少しでもお役に立てれば幸いです。