CROSS研究生滞在報告 京都大学 石井氏
【テーマ:四級ホスホニウム系イオン液体の直接重水素化法の開発】
研究開発部 阿久津 和宏
京都大学 工学研究科 博士課程2年 石井 浩介さんが、CROSS中性子科学センター研究生として、2023年5月15(月)〜5月19日(金)及び6月27(火)〜7月1日(土)に重水素化物合成の実習を行い、自身の中性子反射率実験に使用する重水素化イオン液体の合成法の共同開発に取り組みました。
実習内容
今回の実習は1週間×2回の実習であり、実習の前半は重水素化イオン液体合成のための条件検討、中盤から後半にかけては重水素化イオン液体の大量合成実験を予定していました。
1回目の実習では、初日に実習全体のスケジュール作成を行い、夕方からは1回目の重水素化実験を実施しました。1回目の実験で得られたイオン液体の重水素化率は13%程度と想定よりも大幅に低く、想定外の結果となりました。この結果を受けて実験が不調であった要因を推定し、2回目の実験では実験試料の組成を変えて重水素化に再挑戦しました。その結果、2回目の実験では重水素化率が93%程度のイオン液体が合成できたことを確認しました。イオン液体の重水素化率が改善し、重水素化イオン液体の大量合成の道筋が見えてきたところで1回目の実習は終了となりました。
2回目の実習では重水素化イオン液体の大量合成を連続で実施し、その結果30g程度の重水素化イオン液体を得ることが出来ました。また、6月28日には実習報告会を開催し、柴山センター長、西准教授(京都大学)ら参加者と発表内容に関する討論や重水素化技術に関する有意義な意見交換を行いました。
CROSS研究生実習を終えて
石井さんには、事前に計画した実験方法に従って重水素化実験を実施して貰いましたが、1回目の実験で得られたイオン液体の重水素化率は13%程度と見積もられました。この値は想定よりも大幅に低く、その要因を突き止める必要に迫られました。石井さんは1回目の実験で反応効率が低かった要因をNMR及び蛍光X線による分析で推定し、重水素化の実験条件に修正を加えました。その結果、最終的には重水素化率は93%まで改善し、30gを超える量の大量合成にも成功しました。実習開始当初は想定外のトラブルに見舞われましたが、最終的には目標としていた重水素化イオン液体の大量合成を達成できました。なお、今回の実習合成した重水素化イオン液体は2023年度後半に予定している中性子反射率の研究で活用される予定であり、新奇成果の創出に繋がる見込みです。