CROSS研究生滞在報告
研究開発部 有馬 寛、岩瀬 裕希
2020年8月2日~8日の日程で、大阪薬科大学製剤設計学研究室博士課程に在籍する野上聡さんがCROSS研究生として活動されました。CROSSでは中性子科学に関する知識及び技術の習得を希望する学生をCROSS研究生として受け入れています。野上さんは博士課程でのテーマであるゲルを応用した製剤設計に関して、構造科学の観点を研究に取り入れたいとの強い希望のもと、CROSS研究生に応募されました。初回となる今回の滞在では、機能性ゲル製剤の候補物質に関して、レオメータによる粘弾性測定と動的光散乱による構造解析に取り組まれました。今回の成果をもとに、中性子散乱実験の計画を進めていく予定です。
CROSS/J-PARCには中性子利用の促進を目的とした先端的な測定装置が整備され、高度な技術を持つスタッフによって維持管理されています。野上さんの滞在中のスケジュールは、これら装置を用いて測定を進めるとともに、幅広い専門分野から構成されるCROSSスタッフと議論を行うことで、研究内容をより深めてもらうことを目的に立案しました。表1に滞在スケジュールを示します。野上さんにとっては初めて使用する装置での実験でしたが、夕方以降の時間をディスカッションに充てることで測定原理から解析方法、結果の解釈に至るまで、ゼロから習得して頂きました。また、各装置管理者のご尽力もあり、事前に準備した試料は滞在中に全て予定通り測定することができました。CROSS/J-PARCスタッフとの議論ではソフトマター分野を専門とする研究員を中心に、野上さんの研究テーマに関して様々な観点からアドバイスを行いました。
野上さんからは、各装置を習得し今後の研究活動に活かそうという姿勢が随所に見られました。滞在中の経験を通して、これからの中性子散乱実験実施への願望がより一層強まったとのことです。今年度中にさらに2回のCROSS滞在を予定しています。これからもCROSS/J-PARCの資源を活用し、中性子利用の視点をもつ研究者へと成長されることを期待しています。