CROSS研究生: BL02 DNA装置調整作業への参加
東北大学金属材料研究所 博士課程(後期)の浅野 駿さんが、研究生として1月21(月)から25日(金)まで研究を行いました。研究期間前半は、研究指導者の松浦直人BL02グループリーダーに付いて、BL02 DNAの測定原理や準弾性散乱の学習、準弾性散乱解析の演習を行い、DNAの特徴を理解しました。後半は、ビームラインスタッフの仕事であるユーザー持ち込み機器の安全審査の準備やビームモニターのプリアンプおよびパルス成形チョッパーの調整作業に貢献しました。
研究生5日間の全内容
1日目
浅野さんは量子ビームを用いた銅酸化物超伝導体の研究を専門としています。これまで、MLFのBL01 四季やBL12 HRC、BL21 NOVA、ミュオンを利用してきました。しかし、DNAでの中性子非干渉性散乱や準弾性散乱の測定は、浅野さんにとっては馴染みのない測定でした。そこで最初にDNAを見学し、DNAの測定原理や準弾性散乱を学びました。夕方にはDNAスタッフによる歓迎会に参加し、装置やサイエンスについて歓談しました。
2日目
午前中はBL22 螺鈿とBL17 写楽を見学しました。螺鈿では林田洋寿BL22グループリーダーから、写楽では花島隆泰研究員から測定原理や装置開発状況を学びました。DNAでは装置のメインコンポーネントが遮蔽体に覆われて見ることができません。しかし、螺鈿と写楽は検出器や中性子偏極コンポーネントなどを直に見ることができるため、デバイス開発の話を熱心に聞きました。その後、DNAのデータ解析を学ぶために、中性子・ミュオンスクールのデータを用いた準弾性散乱解析の演習を行いました。
午後にはCROSS内の活動やMLFスタッフのサイエンスの活動を学ぶために、CROSSの全体会合や不規則系サイエンスグループ会合に参加しました。サイエンスグループ会合では分からないことに対し積極的に質問していました。
3日目
3日目は午後から、CROSSビームラインスタッフの仕事の1つであるユーザー持ち込み機器の安全審査の準備を手伝いました。安全審査を受けるための準備を行い、持ち込み機器の不具合を2か所修正しました。
また、午後9時からのビーム供用開始予定より早く、午後4時過ぎから600kWでビームが出たので、DNAでのビームモニターのプリアンプ調整作業に参加しました。この調整作業はユーザーがなかなか経験することがない作業ですが、浅野さんは分からないことは何でも質問し、作業の原理を理解していました。
午後9時からはパルス成形チョッパーの調整作業を行いました。この作業では、パルス整形チョッパーのゼロ点出しと、これまで運用してきた225Hzの回転数での最適条件探しをしました。このような調整作業は単純で時間がかかるものですが、夜遅くまで根気よく作業を続けました。
4日目
前日に引き続きパルス成形チョッパーの調整を行いました。この日は予想外のシグナルに対して色々と議論しながらの作業となりました。また、手間のかかるデータプロット作業を担当し、精細なグラフを手早く作成することで貢献しました。
5日目
最終日はこれまでに測定したデータの整理と成果報告のスライドの作成を行いました。昼休みにはCROSS有志によるソフトボール練習にも参加し、CROSSスタッフと親睦を深めました。成果報告では、CROSS研究生の目的やCROSSやDNAを選んだ理由などの説明に加えて、パルス整形チョッパーの原理や装置調整作業の結果などをとても分かり易く説明しました。
研究を終えて
浅野さんは、「一般利用課題では体験できない装置に関する貴重な体験をすることができました。東北大学からより多くの研究生が来られるよう、本研究の内容を報告しようと思います。今後はDNAを用いる実験課題も考えてみようと思います。」と研究生を終えての感想を述べました。
松浦リーダーは、「浅野さんは、これまでMLFの装置を利用してきただけあって、理解が非常に早く、馴染みのない中性子非干渉性散乱や準弾性散乱も不規則系サイエンスも積極的に学んでいました。初日の昼食時にCROSSスタッフと歓談する中で、2日目の午前中に螺鈿と写楽を見学する機会を得るなど、DNAに止まらず他の装置も学ぼうとする姿勢が好ましかったです。ビームモニターのプリアンプの調整作業でも、浅野さんは一生懸命質問することで作業の意味を理解していきました。準弾性散乱解析の演習やパルス成形チョッパーの調整では、処理能力の高さを発揮していました。特に手間のかかるデータプロット作業で、非常に綺麗なグラフを手早く作成してくれたのは本当に助かりました。積極的に学ぶ姿勢が見られた上に、今後、後輩がCROSSで研究生を受ける内容を検討するなど、周りも活かす発想ができているところが素晴らしかった。」と浅野さんを絶賛しました。