CROSS研究生体験記 東海大学 能登氏(2023年1月)
東海大学 大学院工学研究科 電気電子工学専攻
修士課程2年 能登 勇真
私は2023年1月10日から1月13日までの4日間、2月6日から2月10日までの5日間の計9日間一般財団法人総合科学研究機構(CROSS)中性子科学センターの研究生として、坂口佳史主任研究員ご指導の下、中性子反射率の測定データにおけるデータリダクション並びにフィッティング解析の手法をご教授頂きました。ここに体験記として活動内容を報告します。
私は、中性子反射率法によるアモルファス二硫化ゲルマニウムへの銀のフォトドーピングの解明に取り組んでいます。フォトドーピングとは、非晶質カルコゲナイドとある種の金属の2層膜に光を照射するとカルコゲナイド中へ金属が異常拡散される現象です。銀のフォトドーピングの過程を、成果公開型一般課題2022B0105(BL17)にて実施した中性子反射率測定により計測してきました。2022年の7月にMotofitという世界の諸施設でもよく用いられている解析ソフトを用いてX線反射率測定における解析手法を学ばせて頂きました。 今回は中性子反射率測定のデータの取り出し方や中性子反射率測定における解析の手法を学ばせて頂くために、再度応募させて頂きました。
1月には、中性子の反射率のデータの取り出し方や3種類ある試料のうちの1種類について解析を行いました。 実験データの取り出しをする際に、 Pythonにてデータを変換する必要があり、 最初はとても苦戦しました。 私が苦戦していると優しく丁寧にご説明してくださり、 なんとか無事に終える事ができました。
そして中性子反射率測定の解析に入り、 また壁にぶつかりました。 7月に解析手法を学んでいたので初めはスムーズに行うことができたのですが、 途中から何をしてもフィッティングが合わなくなってしまいました。 そこで疑問点を尋ねたところ一つのデータだけでなく前後のデータと照らし合わせる必要がある事を教わりました。 その後はスムーズにフィッティングする事ができ時間の関係で一部出来なかった所があったものの納得のいくフィッティングをする事ができました。
2月には、残った2種類の試料について解析を行い、 解析結果について議論をしました。 解析結果についてなぜこうなるのか自分では答えを出すことが出来ませんでしたが、坂口氏に膜構造の基礎の部分から直面している問題点をご説明頂き理解することが出来ました。 膜を構成する原子の動向について理解が深まったので、 根拠のある考察をする事ができました。初めは何も知らない所からスタートしたのですが、 今ではデータを見るだけでどういう事が起きてなぜそうなったかを一人で説明出来るまでに成長しました。 今回学んだ内容を基により詳細な銀のフォトドーピィングの解明に向けて精進して参ります。
最後になりましたが、今回の実習を受け入れてくださいました柴山充弘中性子科学センター長、指導していただいた坂口佳史氏、お忙しい中報告会に参加され、貴重な質問ご意見を頂きました花島隆泰氏に深く感謝いたします。また筑波技術大学、村上佳久先生、指導教員の渋谷猛久先生には、CROSSでの貴重な経験の機会を与えていただきまして深く感謝申し上げます。