空間(space)

最終更新日:2026.9.22

物理や数学では「空間」がよくでてきますが、いろいろな「空間」あって混乱したことはありませんか?私は、久しぶりに量子力学を勉強しなおそうと一念発起して始めたのはいいが、「ヒルベルト空間」がでてきて、「あれっ?? これって何だっけ? これまで習った空間と何が違う?」と自問自答したのがこの講座のきっかけです。ここでは代表的な空間のいくつかを振り返ってみましょう。


物理を勉強していると、さまざまな「空間」が定義され、理論が展開されていきます。中学校や高校で習う一番、身近な空間は単に「空間」と呼ばれることが多いですが、難しくは「ユークリッド空間」といいます。それは、「ふつうの距離や角度がそのまま使える平らな空間」とのこと。なんだか、「あたりまえじゃん!」と思いますが、それは、これから出てくる難しい「空間」のはじまり、はじまり、なのです。言い換えると、「空間」には「ふつうの距離や角度がそのまま使えない空間」がいっぱいある、ということです。

前置きはこのくらいにして、早速、いろいろな「空間」をみていきましょう。以下は、「空間」、「数学的な特徴」、「主な用途」を表にしたものです(Google Geminiさんより)。みなさん、どれだけ知っていますか??

空間 数学的な特徴 主な用途
ユークリッド空間 距離・角度が普通に定義される 高校数学、古典力学
ベクトル空間 ベクトルの足し算・スカラー倍ができる 線形代数、量子力学
アフィン空間 原点を持たないベクトル空間 幾何学、コンピュータグラフィックス
計量空間 距離だけが定義される 解析学
位相空間 「連続性」だけを考える 位相幾何学
ノルム空間 ベクトルの長さが定義される 関数解析
ヒルベルト空間 内積があり完備 量子力学、フーリエ解析
バナッハ空間 ノルムがあり完備 関数解析、偏微分方程式
多様体 局所的にはユークリッド空間 一般相対論、微分幾何
リーマン多様体 多様体上で距離・角度を測れる 一般相対論
ミンコフスキー空間 時間と空間を合わせた時空 特殊相対論
相空間 位置と運動量を組にした空間 力学系、統計力学
配置空間 系の取り得る位置の集合 力学
状態空間 系の全状態を表す空間 制御理論、量子力学
関数空間 関数を「点」とみなす空間 解析学、量子場理論
これらの空間全部を説明するのは本意ではなく、また私の知識のおよぶところでないので、ほんの少しをかいつまんで解説(?)しましょう。
ベクトル空間(vector space)とユークリッド(Euclidean Space)空間:「ベクトル空間は矢印の計算ができる世界、ユークリッド空間はその世界にさらに定規(長さ)と分度器(角度)を持ち込んだ世界」
計量空間(距離空間):集合の要素(点)の間に「距離」だけが定義された空間。(ベクトル空間である必要はない)
アフィン空間(Affine Space):ベクトル空間から「原点(基準となる点)」を取り去った空間。逆に、ユークリッド空間とは、アフィン空間(またはベクトル空間)に、「長さ」や「角度」を測るルール(内積)が備わった空間。
位相空間(Topological Space):「つながり」や「極限」の概念だけの世界。例:「ドーナツとマグカップは、穴が1つという意味で同じ空間(位相空間として同型)」
ヒルベルト空間(Hilbert Space)とユークリッド空間:ヒルベルト空間とユークリッド空間の最大の違いは、「次元が有限(ユークリッド空間)か、無限(あるいは関数を扱えるか)(ヒルベルト空間)どうか」。ヒルベルト空間は「関数」そのものをベクトルとみなした空間。関数や無限個の数列なども含む。ひとことでいうと、ユークリッド空間を無限次元の「関数論」にまで一般化したもの。
ミンコフスキー空間(Minkowski space):4次元時空(ミンコフスキー時空)。アインシュタインの師であるミンコフスキーが時間 c t と空間 (x, y, z) をまとめて4次元のベクトル(位置4元ベクトル)として扱う枠組みを提案。
ここまでで、どうにか私のはてな?は解消しました。みなさんはいかがですか?以下の図でさまざまな「空間」をまとめておきましょう。

最後に、ついでに私がこれまで関わったことのある「相空間」についてもう少しお話しましょう。

相空間(Phase Space):物理系や力学系の「あり得るすべての状態」を1つの「点」として描き出すための空間。「位置」と「運動量(勢い)」をセット(ペア)にして座標軸にした空間。エルゴード性(相空間の中で「許された領域(エネルギーが同じ場所など)」の隅々まで、偏りなく平等に訪れること)を議論するときなどにお目にかかる用語です。なお、Phase Spaceを相空間ではなく位相空間ともいったりしますが、ここではTopological Spaceと明確に区別するために相空間(Phase Space)と表記しました。

お楽しみいただけましたか?それとも「迷宮空間」へと誘われてしまいましたか??