球面調和関数(Spherical Harmonics)
作成日:2026.7.14、最終更新日:2026.7.20
「球面調和関数」とは何ともかっこいい響きの関数(?)ですね。しかし、量子化学で原子軌道を勉強したとき球面調和関数がでてきたとたん、その難しさ・ややこしさのため、いっぺんで化学が嫌いになった方が多いかと(私もその一人)。しかし、球面調和関数は球面上の波を表す非常に重要な概念・関数なので、大雑把でもいいから理解しておくといいですね。
AI先生によると、「球面調和関数」とは「3次元空間で原点からの距離が一定の面(球面)の上で定義される関数」とのこと。表し方はYlm(θ, φ)です。φは方位角(経度みたいなもの)、θは天頂角(緯度みたいなもの)です。
球面調和関数を式で表すと、
となります。ここで、
はルジャンドル陪関数といって、またまたよくわからない関数です。
l は0から始まる正整数です。l =0 だと単なる球面を表しますが、l ≠0 では球面上に波が現れ、l =1 では「節」が一つ、l =2になると二つ、と増えていきます。もう一つの添字m は -l ≤ m ≤ l の整数です。l, m の数が大きくなるほど波が細かく・複雑になっていきます。
ますますわからなくなってきましたか?
でもこの式をよく見ると、(定数項) x (ルジャンドル陪関数) x (指数項
)の形になっていますね。
は難しいので、ここでは深入りしないことにします(興味ある方はこの講義の末尾の付録1,2をご覧ください)。一方の指数項は、mが0なら定数で、mが1なら2πを周期とする複素平面上での波、mが2,3, ...と大きくなるにつれて周波数が2倍、3倍と大きくなる波を表していることがわかります。
百聞は一見に如かず。球面調和関数を動画(1)でみてみましょう。 [出典はこちら。Licence: Visual Array of Real Spherical Harmonic Amplitude Represented with Polar Plot. This file is licensed under the Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0 International license.]
ご覧になりましたか?何度もじっくりと観てください。ピラミッド状に並んだ図形がぐるぐる回っていますね。じっとみていても何が何だかわからないとおもうので、順番にみていきましょう。
まず、頂点から真下に見ていくと、l は0から1、2、...と増えていきますが、mは0のままですね。これは、m = 0だから(指数項)は定数1のままなので「赤道方向まわりでは波打たない(色の変化はない)」からです。次に、ピラミッドを上から見ていきます。上から2段目(l = 1)をみてみましょう。左からm = -1, 0, 1ですね。これらは、赤道まわりの回転で色の反転が1回ある、ない、位相がπずれて1回ある、ことを意味しています。さらに、上から3段目(l = 2)になると、mは左から、-2, -1, 0, 1, 2と5種類(2l + 1 = 5)となり、波も複雑になっています。以下、l が増えるにつれてどんどん複雑化していきます。
なんとなく理解できましたか?
次に、球面調和関数を量子論に関係づけていきましょう。
量子論ではシュレーディンガー方程式を扱います。波動関数を極座標系で表し、動径部分と角度部分の積に分けて解いていきます。角度部分に相当するのが球面調和関数で、l は方位量子数、m は磁気量子数と呼ばれています。量子論や量子化学を習ったことがある人は、記憶が蘇ってきましたね。
もうひとつ、球面調和関数の動画(2)をみてみましょう。
[出典はこちら。https://note.com/nebukuuro/n/n81ca005977f6, ymdymrさんに感謝]
ここで、「波」は複素空間上での波なので図にすることは難しいですが、この動画では波の位相をカラー表示することで「波」を表しています(心憎いですね)。また、mが負のときは反時計回り、mが正のときは時計回りで回っていることにも注意しましょう。さて、上から2段目のl = 1 の列をみてみましょう。ここではドーナッツ状の輪が1回転で1まわり(周期が2π)(例えば赤の部分が1つある)していることがわかりますか?それが、上から3段目のl = 2では2つ現れていまね(周期が2π/l = π)。また、動画(1)ではよくわからなかった、Ylm = Y10では赤道に「節」(くびれ)があるのが観て取れますね。これは、mは0なので赤道周りには「波」はないけど、l が1なので子午線方向には、θ = 0 (北極)からθ = π(南極)までの間に「節」が一つある「波」であることを示しています。
同じように、Y20では、赤道を1週する間に2周期分の波が現れる図形となります。一方、m ≠ 0では、l とmの次数に応じた「複雑な波」が現れるわけです。
次に、m=±1 の波を重ねて定在波(定常波)を作ってみましょう。こうすると、右回り、左回りの波が重なり、z軸周りに回転する波も定在波になります。

[出典はこちら。https://note.com/nebukuuro/n/n81ca005977f6, ふたたびymdymrさんに感謝]
どうですか?量子論において、水素原子の原子軌道、すなわち s軌道、p軌道、d軌道などが再現されましたね。
付録1球面調和関数
付録2:ルジャンドル多項式とルジャンドル陪関数
