【開催報告】「2024年度量子ビームサイエンスフェスタ」(3月12日~14日)
第16回MLFシンポジウム、第42回PFシンポジウム
実行委員 河村 幸彦
高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所、J-PARCセンター、総合科学研究機構(CROSS)、PF※ユーザーアソシエーション(PF-UA)、J-PARC MLF利用者懇談会が主催する「2024年度量子ビームサイエンスフェスタ」が、3月12日から14日の3日間、つくば国際会議場にて開催されました。会期中には、延べ565名が参加しました。
初日はMLFシンポジウムが開催され、J-PARC副センター長の金正倫計氏による開会挨拶に続き、J-PARC MLFディビジョン長/物構研副所長の大友季哉氏よりMLFの現状報告が行われました。その後、中性子源に関するトラブルの説明をはじめ、水銀ターゲット容器やミュオン回転標的の高度化・長寿命化に関する講演、MLFの課題利用申請、学位論文執筆などの緊急課題に対する迅速な利用制度のあり方について、各担当者からの報告と議論が行われました。午後にはMLF利用者懇談会が開かれ、会長の大山研司氏からユーザーの声の重要性が強調されました。
その後は、MLFのロードマップの現状報告と将来計画が発表され、意見交換の場が設けられました。



2日目のサイエンスフェスタでは、基調講演として立命館大学SRセンターの朝倉清高氏がマルチビームを活用した触媒表面化学の解析手法を紹介。触媒機能の理論的理解と応用への広がりについて展望を示しました。続いて、物質・材料研究機構(NIMS)の出村雅彦氏が、AI解析アプリ「pinax」を用いたマテリアルDXの取り組みと研究効率向上に向けた取り組みを共有しました。午後には分野別口頭発表とポスター発表がそれぞれの会場で行われ、研究成果をめぐる活発な交流が行われました。夕方からは懇親会も実施され、各分野の参加者同士が親睦を深めるひとときとなりました。あわせて、優れたポスター発表を行った学生6名には奨励賞が授与されています。


最終日にはPFシンポジウムが開催され、将来光源に向けたビームラインや加速器の計画、次期光源PF-HLS構想、さらに低速陽子実験施設SPFの増強成果などが紹介され、今後の施設高度化に関する議論が交わされました。
全体を通じて、研究者、施設スタッフ、ユーザーの垣根を越えた交流が生まれ、量子ビームを活用した研究や将来計画について、実りある議論が展開される機会となりました。
次回は水戸市民会館での開催が予定されています。
※KEK放射光実験施設