令和6年度理事長表彰 上田氏、永井氏、阿部氏が受賞

2024.11.19

令和6年度理事長表彰 上田氏、永井氏、阿部氏が受賞

集合写真(左から前列:阿部氏、柴山センター長、横溝理事長、上田氏、永井氏。後列:鈴木センター長、北澤センター長、村澤局長

2024年10月8日(火)、理事長表彰賞の表彰式を行いました。本表彰は、総合科学研究機構に勤務する職員等の中で顕著な功績を挙げたものに対し、その功績をたたえ、感謝の意を表し、CROSSが担う業務の更なる推進を図ることを目的としています。

今年度の受賞者は上田氏、永井氏、阿部氏でした。受賞者には盾が贈られ、受賞講演が行われました。多くの方が出席され、授賞講演に関心を寄せていました。

研究開発部 上田 実咲(技師)・永井 佑樹(技師)

受賞テーマ:「CROSSユーザー実験準備室の利用申請・安全教育オンラインシステムの構築」

表彰式の様子

表彰式の様子

受賞講演の様子

受賞理由

CROSSユーザー実験準備室(CROSS Lab)をユーザーが利用するための利用申請・安全教育について、Excelファイルによる利用申請書の確認をLab管理担当者間でメールをやり取りしながら進めるため、承認までに時間を要するだけでなく、進捗がフォローしにくい、安全教育の日程調整と説明が必要など、担当者に負荷のかかるものであった。また、ユーザーにとっては、CROSS Labの利用に必要な安全教育を、CROSSに到着した後にしか受講できないなどの不便があった。

上田技師はこれらの問題点を解決するべく、Lab運営メンバーを取り纏めながら、利用申請・安全教育オンラインシステムの仕様・フローを決定し、安全教育ビデオの製作を計画的に進めた。また、オンラインシステムの仕様・フロー構築にAWS、Googleを利用し、その実現に永井技師が大きく貢献した。このオンラインシステムの構築により、担当者の負担が低減されるとともに、ユーザーが安全教育をオンラインで事前に受講することが可能となり、利便性が格段に向上した。

以上のように、上田技師、永井技師はCROSS Labの利用申請・安全教育オンラインシステムの構築において顕著な業績を上げた為、今年度の理事長表彰の受賞に値すると認められた。

研究開発部(兼務:産学連携推進室)阿部 淳(研究員)

受賞テーマ:「高温高圧中性子試料セルの開発と中性子利用の促進」

受賞講演の様子

受賞講演の様子

受賞理由

阿部淳研究員は、イメージング、小角散乱、反射率の3つの中性子実験手法のそれぞれに適した専用の高温高圧中性子試料セルを開発し、中性子以外の手法では不可能な金属容器内で進行する反応過程の直接観察を実現した。これらのセルは特に亜臨界水および超臨界水を利用した廃プラスチック処理やバイオマス分解技術の研究において重要な貢献を果たしている。この研究は環境負荷の低減と資源再利用という社会課題の解決において重要な位置付けを持ちながらも、反応メカニズムや条件には未解明な部分が多く、エネルギー効率の低下や反応制御の難しさ、副生成物の発生などの課題がある。阿部研究員は、これらの課題解決に向けた研究を活発に推進するとともに、開発セルについて主著論文*1, *2や「四季」の記事*3にまとめ上げたことも特筆に値する。

さらに、阿部研究員は、高圧中性子利用研究会の開催を主導し、最新の研究結果の共有だけでなく、将来の研究方向性や協力体制を構築している。同研究会を通じて、東北大学を中心とした複数の外部機関との協力体制が検討され、大型研究費申請を目指す取り組みも開始した。また、前述の論文発表に加え、複数の報告会や学会において情報発信を行い、さらには企業との個別相談会、装置見学、予備実験の対応を行うなど、新規ユーザー開拓にも積極的に取り組んでおり、これらの活動が、産業界、学術界双方に渡る外部ユーザーの実験課題実施、利用促進に繋がっている。

以上のように、阿部研究員は高温高圧中性子試料セルの開発と、それらを用いた産業界を中心とする中性子利用促進において顕著な功績を挙げており、理事長賞表彰の受賞に値すると認められた。

*1 Rev. Sci. Instrum. 2023, 94 (8), 083904.
*2 J. Appl. Cryst. 2024, 57(2), 306-313.
*3 中性子産業利用推進協議会 季報「四季」2023年秋号(vol.60)2-3

<過去の表彰について>