CROSS研究生体験記

2020.09.23

CROSS研究生体験記

岐阜薬科大学創薬化学大講座 博士課程2年 阪 一穂

柴山センター長(左)から修了証を受け取る阪さん(右)

私は2020年8月31日から9月4日までの5日間、一般財団法人総合科学研究機構(CROSS)中性子科学センターに研究生として滞在し、重水素に関する実験をさせて頂きました。ここに体験記として活動内容を報告します。

私は岐阜薬科大学創薬化学大講座薬品化学研究室に所属し、プロセス化学を指向した新規有機合成反応や安価な重水源である重水を用いた重水素標識化反応の開発研究に取り組んでいます。重水は重水素標識化反応のほか、核磁気共鳴法や中性子散乱実験の溶媒としても用いられていますが、大気中での保管や取り扱いでは、空気中の軽水が混入して劣化(濃度が低下)するため注意が必要です。しかし、この重水の劣化メカニズムを詳細に調べた研究例はなく、「重水の劣化メカニズム」は、重水素科学が発展した現在でも、誰もが知っているようで知らない「謎」として存在しています。そこで、今回の実習では、この謎を追究する研究をCROSSユーザー実験準備室IIIにて実施しました。

阪さんの研究報告会の様子

初日の午前中は、実習を行う上で必要な安全教育を受講しました。大学でも同様の講義を受けてはいましたが、化学薬品取扱いに関する法令やリスクアセスメントなどを学び、改めて安全対策の重要性を認識しました。午後からはユーザー実験準備室IIIでの実験が開始となりましたが、実験準備室内では法令を順守した設備や非常時の対策などを随所で見受けることができ、CROSSの安全体制・意識の高さを実感しました。2日目からは、赤外分光(IR)装置を用いた重水劣化試験を本格的に開始しました。実験が進むにつれて当初の仮説が誤っていたことが明らかとなりましたが、柴山センター長を始めとしたCROSSスタッフの皆様と議論を重ねることで計画を軌道修正し、劣化メカニズム解明の鍵となる有意義なデータを取得することができました。最終日には今回の実習で得られた成果をまとめ、成果報告会に臨みました。報告会では、柴山センター長からは薬学や有機化学とは異なる視点からの貴重なご意見を頂き、多角的に今回の実験結果を考察するとともに新たな課題も見出すことができました。重水劣化に関する研究は、大学に戻った後もCROSSと共同で取り組んでいきたいと思います。

今回の実習では、有機合成化学外の専門の方々とのディスカッションを通じて、重水及び重水素標識化反応に関する貴重な知見を得ることができました。これらの経験を研究室のメンバーの中で共有するとともに、自身の今後の研究生活にも役立てて参ります。

5日間というとても短い期間でしたが、柴山センター長、阿久津氏をはじめCROSSスタッフの皆様に大変お世話になりました。また、薬品化学研究室の佐治木弘尚教授、澤間善成准教授にはCROSSでの実習の機会を頂きまして、誠に有り難う御座いました。