平成23年度「日本中間子科学会若手奨励賞」を大石一城副主任研究員が受賞

2012.03.27

平成23年度「日本中間子科学会若手奨励賞」を大石一城副主任研究員が受賞

2012年3月27日

右手と左手は、鏡像関係にありますが、右手の掌と左手の甲を向かい合わせたときに重ね合わせることができません。このように3次元の物体や図形がその鏡像と重ね合わせることができない性質を「キラリティー」と呼びます。

物質を構成する分子構造にもこのキラリティーが存在しており、分子磁性体1)の一つである[Cr(CN)6][Mn(S/R)-pnH(H2O)](H2O)(以後GN-(S/R)と略記。)では、結晶構造にキラリティーがあるGN-(S)とGN-(R)において、その磁気構造にもキラリティーがあることが示唆されていました。


左から鳥養会長(中間子科学会)、大石一城氏(CROSS東海)、牧村俊助氏(KEK)

今回、受賞対象となった論文「Possible Magnetic Chirality in Optically Chiral Magnet [Cr(CN)6][Mn(S)-pnH(H2O)](H2O) Probed by Muon Spin Rotation and Relaxation」(ミュオンスピン回転・緩和(µ+SR)法による分子磁性体[Cr(CN)6][Mn(S/R)-pnH(H2O)](H2O)の磁気構造キラリティーの研究)は、GN-(S)とGN-(R)の磁気構造にもキラリティーがあることをµ+SR実験により観測した結果を発表したものです。これは大石一城副主任研究員が高エネルギー加速器研究機構(KEK)に在籍中、KEK物質構造科学研究所と総合研究大学院大学、自然科学研究機構分子科学研究所、広島大学が共同で行った実験の成果をまとめたもので、Journal of the Physical Society of Japan (2006年6月号)でも注目論文として取り上げられていました。


受賞講演の様子

「日本中間子科学会若手奨励賞」は中間子科学の発展に貢献しうる優秀な論文を発表した若手会員に送られる賞です。受賞対象となった論文は、GN-(S/R)で結晶のキラリティーが磁気構造のキラリティーを誘起することが指摘されたことにより、キラル磁性物性の研究に大きな展望を与えたこと、また直接磁気構造を観測せずともミュオン位置(µ+)の内部磁場測定により、磁気構造キラリティーを決定できる可能性を示しµ+SR法の新たな可能性を見出したことが高く評価され今回の受賞となりました。
なお、授賞式及び受賞講演は2012年3月26日に日本中間子科学会総会(於:関西学院大学)で行われました。

1) 分子磁性体・・・磁石の性質を持つ分子構造体

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