CROSS Reports Vol. 3, Article 2「J-PARC MLF BL17 1 Tマグネット電流制御用小型デバイス制御サーバーの開発」
CROSS職員の技術報告などを掲載するCROSS Reportsで、Volume 3, Article 2「J-PARC MLF BL17 1 Tマグネット電流制御用小型デバイス制御サーバーの開発」を2025年4月24日に発行しました。
概要
大強度陽子加速器施設(J-PARC)物質・生命科学実験施設(MLF)に設置されている偏極中性子反射率計 BL17 SHARAKU で用いられている 1 T マグネットの制御では従来プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)を使用していたが、制御信号の配線が長いためにノイズが混入しやすく、弱磁場実験に必要な磁場制御精度が不足していた。我々は、これらの課題を解決するため、小型デバイス制御統合システムを開発した。このシステムは、弱磁場実験に必要な高分解能磁場制御、高周波ノイズの除去機能、試料環境機器との一体化が可能という特徴を持つ。本開発では、従来計算機室内の大型サーバーで行われていたデバイス制御を、手のひらサイズの小型計算機 Raspberry Pi 4 に実装し、汎用的で多彩なデジタル、アナログ、波形入出力と高分解能制御を安価に実現できる小型入出力ユニット(株式会社コンテック社製)、高周波ノイズを除去するためのローパスフィルタを組み合わせた。PLCは12bitのdigital-to-analog 変換(DA変換)であるのに対し、新しく開発したシステムは 16bitとなり、磁場制御の分解能は 0.49 mTから0.031 mTに向上した。またノイズについては、最大 ±10 Vの制御信号に対して約1 Vの高周波ノイズがのっていたが、新システムでは 約0.05 Vまでノイズが低減できた。以上の理由で、マグネットのみならず、J-PARC MLF内の多くの試料環境機器の制御への展開が期待されている。
記事情報
記事タイトル | J-PARC MLF BL17 1 Tマグネット電流制御用小型デバイス制御サーバーの開発 |
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著者 | 笠井 聡, 青木 裕之, 大内 啓一, 阿久津 和宏, 花島 隆泰, 宮田 登 |
DOI | https://doi.org/10.57378/crossrep.2025002 |