「専用ビームライン 中間評価」について

「専用ビームライン 中間評価」について
Interim Review Results of Contract Beamlines

J-PARC/MLFの専用ビームラインは、(独)日本原子力研究機構、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構以外の設置者が、その利用目的に添った計画を立案し、登録施設利用促進機関であるCROSSに設置した専用施設審査委員会および選定委員会において「中性子線専用施設の設置計画の選定に関する基本的考え方」に基づき検討評価され、選定されます。
現在、J-PARC/MLFには茨城県による2本の専用ビームラインが稼働中です。設置が認められた専用ビームラインは、専用施設審査委員会が、その使用状況および研究成果等を定期的に評価し、選定委員会の審議を経て必要に応じて登録機関が専用ビームラインの改善、更新、撤去等を勧告します。

専用施設審査委員会の諮問を受けた中性子実験装置中間評価分科会により2013年12月に下記2本の専用ビームラインの評価が実施されました。その答申を基に2014年1月に専用施設審査委員会および2014年2月に開催しました選定委員会において審議され、引き続きビームラインの運用を「継続」する旨の結果を得ました。財団より、設置者である茨城県へこの結果を通知いたしました。

中間評価の審査結果は下記の通りです。

中間評価実施専用ビームライン

  1. 茨城県生命物質構造解析装置(BL03) : (設置者:茨城県)
  2. 茨城県材料構造解析装置(BL20) : (設置者:茨城県)

装置名:BL03(茨城県生命物質構造解析装置)

本装置は、概ね計画通りに装置の建設・維持・技術開発が進んでおり、特に高感度な新規検出器開発により、最高レベルの感度と安定性を達成し世界トップレベルの装置であり、SNS(米国オークリッジ国立研究所)に先行して開発されている。ただし、当初計画で見込んだタンパクの構造解析は期待とは異なり成果は少ない。対策として学・産共同研究となるようなテーマを選び運営することが望まれる。このことにより、産業界へ本装置本来の特徴と有効性を明確に示すことができると判断する。
他方、有機・高分子材料を対象とした周辺機器と解析ソフトの開発が計画されており、この計画に沿った運営により利用者の拡大を期待する。
以上、本装置は中間評価に記述された今後5年間の計画に基づき継続することが妥当と判断する。

装置名:BL20(茨城県材料構造解析装置)

分解能、測定可能なd領域、測定時間についてユーザーのニーズに即した装置性能が概ね達成されており、SNS(米国オークリッジ国立研究所)のPowgen等海外の装置と比較しても遜色ない世界トップレベルの産業利用に特化した装置であり、ユーザーの支援体制も十分整備されている。
特に近年整備された試料交換装置では、装置担当者の創意工夫により優れた技術開発が実施され、その成果は2012年度の日本中性子科学会 技術賞、並びに2010年 6th International Workshop on Sample Environment at Neutron Scattering Facilities においてThe 1st Michael Meissner Prize を受賞するなど、その技術力の高さと創意工夫はユーザーおよび国内外で高く評価されている。

今後ともメールインサービスなど産業界利用をさらに加速する運営体制・制度構築を目指すことを望む。
また、優れた論文発表、あるいは波及効果の大きい成果の公表など、中性子線利用技術の有効性をより広く社会に発信するために、利用企業への働きかけばかりではなく、県プロジェクトにおけるインパクトの大きい研究の重点実施等に期待する。
以上、本装置計画は継続すべき優れたものと判定する。

総評

概ね中間評価調書に記述された今後5年間の計画に基づき、装置管理・運営を継続することが望ましいとの評価を得た。
なお、BL03(iBIX)はハードの整備がほぼ終了し、世界トップレベルの装置が開発されたが、このBLの有効性をアピールすべく、産業利用にこだわらず本装置の特徴であるタンパクの構造解析でインパクトの大きいテーマを企画・提案・実施すべきである。
また、BL20(iMATERIA)は産業利用に特化し、必要な試料環境制御や試料交換装置など整備され、世界に例のない特徴ある装置となっており、国内外で高く評価されている。今後は、更なる利用者支援のために環境整備、人材確保および解析ソフトの充実に期待する。